広島東洋カープは9年間で売り上げが急上昇、理由は?ビジネスフレームワークの教科書(5/5 ページ)

» 2024年03月30日 09時30分 公開
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事例・参考例(2)広島東洋カープ

ビジネスフレームワークの教科書 アイデア創出・市場分析・企画提案・改善の手法 55』( 安岡寛道、富樫佳織、伊藤智久、小片隆久/SBクリエイティブ)

 広島東洋カープ(以降、広島カープ)は、従来のスポーツファン以外の顧客を取り込む戦略で、2010年〜2019年までの9年間で売り上げを急上昇させました。

 従来の野球リーグは、男性ファンやスポーツ経験者を主な顧客としていましたが、広島カープは「カープ女子」と呼ばれる女性ファンと、小学生から中学生の親子をターゲット顧客にしました。そして、このターゲット顧客が持つ、従来の顧客と異なるニーズは「野球のルールに詳しくなくても試合を楽しみたい」というものです。

 ターゲット顧客のニーズを満たすために、広島カープは選手の個性を公式Webサイトで紹介し、魅力ある選手の応援を価値提案の1つにしました。

 さらに球団キャラクターや選手をモチーフにした応援グッズを開発し、応援する楽しさを提案しました。応援グッズの数は600アイテム以上あります。

 また、ホーム球場であるマツダスタジアムをフードコート化し(出店数は29店)、球場で過ごす楽しさそのものも価値提案としています。

 こうした施策によって、「シーズンごとの試合」や勝利を続けることでの「強さへのロイヤルティ」といった従来の球団と差別化を図り、「たとえ勝てなくてもスタジアムがいっぱいになる球団」を実現しました。

 応援する楽しさという独自性は県外のファンの獲得にもつながり、他球場での試合の集客やチケット販売にも成功しています。

参考文献・参照資料

根来龍之、富樫佳織、足代訓史 著『この1冊で全てわかる ビジネスモデル』SBクリエイティブ、2020年


著者プロフィール:

安岡寛道

 明星大学 経営学部 教授, Ph.D.、中小企業診断士。 慶應義塾大学卒業〜同大学院SDM研究科修了・博士(SDM学/総合社会文化)。 野村総合研究所(NRI)入社後、スクウェア(現スクウェア・エニックス)、Arthur Andersen(現PwCコンサルティング)を経て、NRI再入社。 同社を再度退社後、現職。安岡経営コンサルティング事務所代表などを兼務。

富樫佳織

京都精華大学 メディア表現学部 准教授。早稲田大学商学研究科修了(MBA)。NHK(日本放送教会)、放送作家、WOWOWでのプロデューサーを経て2021年から現職。専門は、ビジネスモデル、プラットフォーム戦略、コンテンツビジネス。 著書に『この一冊で全部わかる ビジネスモデル』『文系学生のための企業研究』等。 メディア企業やコンテンツ企業の事業アドバイザー、コンサルティングを務め、ファン・コミュニティ形成や、UX戦略を取り込んだビジネスモデル検討、施策を行っている。

伊藤智久

 明星大学 経営学部 准教授、日本MITベンチャーフォーラム理事。 東京大学大学院修了後、野村総合研究所で国内外の企業や公的機関の経営コンサルティングに従事。本業の傍ら、滋賀大学ビジネスイノベーションスクールを立ち上げ、スクール長としてアントレプレナーシップ教育に従事。その後、大学教員に転身し、大学で研究と教育に取り組みながら、日本MITベンチャーフォーラムの理事として起業家メンタリングの活動に従事。企業の経営顧問や経営コンサルティング、各種のセミナー講師業にも従事。

小片隆久

 日本電通株式会社所属、ネットワークエンジニア。 入社後は顧客向けネットワーク構築を行うエンジニアとして経験を積んだのち、社内ベンチャー制度に応募して新規ビジネスモデルの考案・創出を担当する。本書でも紹介しているさまざまなビジネスフレームワークを活用した新規アイデア・コンセプト創出を得意とする。現在はネットワークエンジニアに復帰し、顧客の課題解決に従事している。猫派。


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