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転職せず「この会社にいて大丈夫」と思ってほしい──そんな企業が実はやっていること

» 2024年04月04日 12時15分 公開
[小林可奈ITmedia]

 多くの企業が人手不足という課題に直面する中、IT人材の不足は特に甚だしく、採用は困難を極めます。そんな中、既存の従業員のリスキリングで対応する企業が増えています。

 リスキリング施策に取り組んでいる企業は、どのような成果を実感しているのでしょうか。人材の再配置が可能になることのみならず、さまざまな成果があるようです。パーソルイノベーション、リロクラブ、otonohaが共催したセミナー「人材確保×職場定着 強い組織をつくる人事戦略」より、パーソルイノベーションの柿内秀賢氏(「Reskilling Camp」事業責任者)の講演の様子をリアルにお届けします(以下、発言は柿内氏)。

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IT職種の有効求人倍率は「15倍」に

 リスキリング、人材育成に関してお話をしたいと思います。dodaの調べですが、IT関係の職種の有効求人倍率が、最近では15倍まで増えてきております。これは15社のうち14社は採用できないというデータになります。

photo パーソルイノベーション提供資料より抜粋、以下同

 15社に対して、人材が1人という比率になります。そしてこのIT人材の採用競争が激化している背景には、DXに取り組む企業の割合が今も増え続けているということが挙げられます。経産省の下部組織であるIPAが出したDX白書2023という調査結果から、2021年度から22年にかけて、DXに取り組んでいる企業の変化はどうなっているのかについて、全体として増えていると出ています。

 同レポートからは、人材の課題について第1位が「育成」と挙げられており、続いて既存人材の活用、そして外部の採用ということになっています。外部の採用がなかなかうまくいかないという状況が、ここ10年来続いていることも含めて、社内の育成ですとか、既存人材の活用に注目が集まり、その結果リスキリングという言葉が非常に注目を浴びているという流れが見て取れます。

新しい人材の採用だけでなく、社内人材のリスキリングに注目

 企業においてのリスキリングの位置付けは社内と社外に分けたときに、社内の人材、社外の人材をどう活用していくのかという「横軸」のお話と、即戦力と要育成戦力という「縦軸」のお話があります。この4象限の中では「外部かつ即戦力」が中途採用市場で、非常に激化している。

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 競争が激しくなっているということをデータが示しています。ここの中で採用がうまくいかないという課題を持つ企業は、当然社内の即戦力層を優遇するんですが、それだけでは当然足りず、育成によって戦力ができるんじゃないかと注目している、といった流れかと思います。

既に4割の企業がリスキリングに着手 

 リスキリングに関する調査結果に基づいて、もう少し課題感を掘り下げていけたらと思います。660の方に回答いただきまして、業種はさまざまです。リスキリングをやっているのかという質問に対しては、4割の会社がやっていると回答されています。その中でも企業が規模が大きい方がリスキリングの実施の比率が高いという結果が出ております。

対象は「業務改善に関する具体的なスキル」が6割

 どのレベル、レイヤーのスキルに主に取り組んでいるかについては、少し情報が込み入っておりますので補足説明しながらいきたいと思います。左側のピラミッド、三角形のピラミッドは4階層あり、一番下が一番ベーシック、一番上が一番専門的とお考えいただければと思います。

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 ベーシックな、いわゆるDXのリテラシー、どんなマインドスタンスが求められるのか、デジタル技術ってどんなもんなんだろうかということを勉強していると答えている会社は全体の中でも約2割から3割ぐらいです。次いでITの活用とデータの活用、そして業務改善に関する具体的なスキルについても、全体的には35%から40%、多いところで60%の企業がメインで取り組んでいると。

 さらにビジネスアナリティクス、あるいはビジネスプロセスの分析とか、解析・企画、あるいはITのプロジェクトの管理、データ分析やAIの開発、クラウドの設計など具体的な実務に関する専門知識の習得というのは25%ぐらいの会社が取り組んでいる。

 そしてそれを実際に現場でどんどん生かしていくんだということに最も軸足を置いているという会社は10%未満ということになります。

基礎的なリスキリングは一段落 より専門的なスキルへの取り組みが中心に

 全体的には、ベーシックな取り組みが一段落をし、より良い専門的なスキル、ピラミッドでいうと真ん中の階層に今、重点を置いて取り組んでいる会社が増えていると見て取れます。

 まだ専門的な知識を現場でどんどん使っていくということに、主たる軸足を置いた会社がそこまで多くないという状況の中で、リスキリングという戦力化に向けた人材育成が今、行われている。そんな位置付けであろうかと見て取れます。

最も取り組みの多いスキルは「データ活用」

photo (提供:ゲッティイメージズ)

 さらにスキル単体で聞き取りますと、どのスキルが大事と考えているかという項目でいうと、データ活用が一番大事で、その次にリーダーシップ、そしてAIの活用(ChatGPTを含む)という順位になっています。

 この順位は毎回変動するわけですけれども、ここ最近やはりデータの活用ですとかChatGPT含めたAIになってきておりまして、やはり大きなトレンドになっていることがこの結果からも見て取れます。

「この会社にいれば、市場価値を上げられる」 イメージの向上に成果を実感

 リスキリングの成果を実感しているかについては、全体の70%ほどの会社が成果を実感できています。ただ、どんなところに成果を感じてますかというふうに尋ねたところ、結果はかなりバラバラです。その中でもやはり注目したいのは、企業のブランドイメージ、採用イメージに関するものです。

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 つまり人材を今の時代に合ったスキルにアップさせ、成長させる。キャリア構築できる。もっと言うと、キャリアが新しくなるので、この会社にいると、明るい未来が待っているんだ、市場価値が上がるんだという、そんなイメージを持たせたいというような企業の狙いが、このアンケートの中から見えてきています。

スキルアップの機会が少ないと、人材流出が起きる? 企業の懸念

 加えて従業員の満足度についても、高いスコアが毎回出てきています。ブランドイメージの裏返しかもしれませんが、やはり若くて優秀な方とか、あるいはもっと成長していきたい方は転職をしていくという風潮があります。自社に優秀な人材をつなぎとめ、囲い込んでおくためにも、リスキリングが非常に重要であると。旧来型の業務にのみスキルアップの機会が閉じてしまうことは、会社として従業員エンゲージメントに関するリスクだと捉えている。そんな傾向が見て取れます。

 まとめますと、今は企業全体の4割がリスキリングを実施し、スキルに関しても中間ぐらいのスキル、専門とベーシックの中間ぐらいのスキルに今進んでいってる状況です。そして、AIやデータ活用に注目が集まり、企業のイメージ、あるいは人材のエンゲージメントそして再配置ということについて、成果を感じていることが分かります。

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