5足以上買う“コアファン”も スニーカーのような革靴「テクシーリュクス」に起きた、コロナ後の変化(2/3 ページ)

» 2024年04月09日 05時00分 公開
[昆清徳ITmedia]

3つの設計指針

 テクシーリュクスにはどういった特徴があるのか。基本的な設計指針は「ソフト(やわらかな足入れ)」「ライト(軽量設計)」「フレキシブル(動きに合わせて曲がる)」の3つだ。具体的には、前足部とかかと部にラバーを採用することで耐久性とグリップ性を向上させたり、こだわりの履き口パッドを採用したりといった工夫をしている。

 同社が特にこだわっているのが、靴型(ラスト)設計からデザイン・素材選定、製品試験、生産管理まで一貫した生産体制としていることだ。鈴木氏は「自社で手掛けることで、サンプリングごとに細かな調整ができる。靴型の採寸データも社内に蓄積される。こういったことが履き心地の良さにつながっており、強みだと認識している」と説明する。

履き心地にこだわった設計(出所:アシックス商事公式Webサイト、以下同)

 購入層は、20代が9.4%、30代が17.6%、40代が25.8%、50代が33.1%となっている(19年1月〜23年11月、同社EC購入者)。利用者からは「履き心地が良い」「リピート購入している」「軽い」といった声が寄せられている。鈴木氏は「テクシーリュクスは競合と比べて認知度は低いが、一度購入した人がリピートする傾向が強い。弊社のECサイトではまとめ買いする人も多い」と説明する。履き替え、ローテーション用として一度にまとめて購入するケースが多いのが特徴だという。

 同社ではこれまで5足以上購入した人をコアファンと定義し、消費者調査を実施したことがある。コアファンからは「値段もそれほど高くないので、気兼ねなく買い換えられる」「いつでも新品のような状態で履けるのがいい」「おしゃれに気を使っているわけではないが『ちゃんとしている』と見られたい」といった声が聞かれたという。

 近年投入したシリーズとしては、20年発売の「GORE-TEX」シリーズがある。これは、防水性に大きな特徴があり、近年話題になっている異常気象(ゲリラ豪雨)などへの対応を意識している。価格は1万7600円だが、販売先での取り扱いが増えたこともあり、売り上げは右肩上がりだという。また、ビジネススタイルのカジュアル化に対応した「マルチスタイル365」を23年10月に発売している。

防水性が特徴の「GORE-TEX」シリーズ

 テクシーリュクスシリーズの売り上げは19年に最高額に達したが、20年にはコロナ禍の影響で落ち込んだ。その一方で、在宅勤務などの普及でビジネスシューズを履くシーンが減ったことから、消費者は「履いていて楽なもの」を求めるようになった。靴選びの意識が変化した結果、今まで3万円程度のしっかりとしたビジネスシューズを購入していたような人がテクシーリュクスを検討するシーンも増えているという。

防水性が特徴の「GORE-TEX」シリーズ

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