BEVはこれからも確実に普及が進むモビリティである。しかしほとんどの自動車ユーザーに対して利便性が低いということ、安全性を確保したメーカーが十分ではないという点を考えると、本格普及は時期尚早なクルマだとも言える。
タイの自動車市場はまだまだ成長分野であるから、積極的に投資を行い、勝負に出る経営者も多いだろう。そして、富裕層の中には目新しさや見た目の高級感、充実した装備、割安な価格などで中国製、韓国製のBEVを選ぶケースも出てくる。
これを日本車メーカーが出遅れている、慎重すぎると見る向きもある。確かに日本の自動車メーカーの姿勢は慎重に見えるかもしれない。それは中韓メーカーがチャレンジャーであるから当然のことでもあるし、日本車メーカーが成功してきたのは慎重であるからなのだ。
しかし後発メーカーだから、発火事故などのリスクを踏まえても新興国市場にEVを積極投入するというのではない。そもそもリスク管理、品質管理の意識が日本より低いから、販売するハードルが低いのも理由なのである。
したがって1年、2年と市場を見ていけば、必ず潮目が変わるタイミングが訪れるはずだ。なぜなら、最初に飛びついたユーザーの評価が現れて、本当の実力があらわになる。
カタログデータやちょっと試乗したくらいの印象では分からない、信頼性や使い勝手、耐久性などが分かれば、SNSなどで評価があっという間に広がるものだ。もし品質が低ければ、BEVは命に関わる機械だけに「安物買いの銭失い」どころか命まで失うことにもなりかねない。
一般のユーザーにとって、クルマは10年も20年も乗り続けるものではなく、新興国でも富裕層なら2、3年で買い替え、あるいは増車するだろう。その時に再び選んでもらえるブランドであるかが重要なのだ。
中国では渋滞による大気汚染対策にBEV以外の車両の走行を曜日によって規制している地域もある。そうした規制を回避するためにセカンドカーとしてBEVを利用している富裕層が多いようで、遠出する時にはガソリン車やハイブリッド車を利用する。
そうした方法なら不便は少なく、故障やトラブルなどがあっても、ある程度は許容できるかもしれない。しかしBEVだけで全ての移動を済ませようとするユーザーは、数年乗っている間に何度も不具合が出たり、下取り価格が恐ろしく低下したりすれば、それだけで懲りてしまうはずだ。
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