日本のやり方の正しさは欧州のエンジニアリング会社も予測していた。
23年暮れに早稲田大学で開催されたシンポジウムを拝聴した。それはオーストリアのエンジニアリング・コンサル企業AVLと早稲田大学の合同によるシンポジウムで、テーマは「自動車用パワートレイン開発プロセス及び開発手法」。ちなみにAVLは世界中のほとんどの自動車メーカーに技術提供やアドバイスを行っており、F1マシンからBEVまでほとんどのクルマに関する技術を有している。
シンポジウムでは、主要各国のカーボンニュートラル目標から現状の内燃機とEVの種類、さらに低炭素である自動車生産の手段など、段階的にクルマの電動化やカーボンニュートラルに対する解説が進められていった。
その後BEVのシェアの推移や現状の課題、AVLが持つ課題解決の技術、今後の目標など、現時点での状況を解説していった。
そしてすでに中国でも23年10月には前年同期と比べBEVの販売が減少し、PHEV(プラグインハイブリッド車)が増えているという。そうしたデータを踏まえて、世界各国での電動車や水素利用によるカーボンニュートラルへの取り組みに対しても、日本だけがデータや理論に裏打ちされた戦略が出来ていると評価していた。
早稲田大学とAVLが開催した合同シンポジウムで使われた資料の一部。各国の動力別生産台数の予測を2021〜23年で比較したもの。最新の予測では欧州も中国もBEVの普及速度を低下させていることだろう(出展:AVLジャパン)驚いたのは、そのデータの妥当性もさることながら、トヨタが提唱しているHEV(ハイブリッド車)主力の電動化戦略を高く評価していることだった。2050年までのクルマのCO2排出低減へのシナリオ予測でも、欧州に対して日本の方が数値は良好であった。
「日本はうまくやっている」とまで評価してくれた登壇者もいたほどだ。この内容を欧州や中国で語ったら、どういう反応を示すだろうか。そう思わせるほど、日本の自動車メーカーの姿勢を評価してくれたのだ。
日本と欧州の電動化へのアプローチの違いを示した図。欧州では独断的な規制によりBEVを普及させるが、その規定はタンクtoホイール(燃料タンクから走行まで)のCO2排出量により判断しており、実際の環境負荷に合っていない。日本はウェルtoホイール(油井から走行まで)を判断基準として実質的なCO2排出量を減らすことを目指しHEV普及を推進する(出展:AVLジャパン)
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