パワハラの元凶なのに……「追い込み型」のマネジメントがはびこる理由働き方の見取り図(3/3 ページ)

» 2024年04月12日 07時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]
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ストロングマネジメントから脱するためには

 パワハラは完全にはなくせないとしても、部下を追い込むストロングマネジメントを止めさえすれば、その数はかなり減らせる可能性があります。自身がストロングマネジメントで育てられてきた上司にとっては、部下育成がしづらいでしょう。それでも、パワハラの弊害を考えると、脱ストロングマネジメントを進める必要があります。

 脱ストロングマネジメントを進めるのであれば、他人から与えられる恐怖心などではなく、内発的な動機づけによって、部下が自らの意志で自らに負荷をかけられるかどうかが鍵となります。

 上司としては、まず部下自身が主体であることを認識することです。そして、例えば部下がどうなりたいと考えているのかに耳を傾けた上で、実現させるには何が必要かを示します。それが導きとなり、示されたものと現在地点との距離を認識した部下がその差を埋めたいと願えば、自ずと自らに負荷をかけることになります。

 上司はそんな部下の意志を尊重して、なりたい姿になるための支援をします。このような関わり方は、サーバントリーダーシップ(servant leadership)などと呼ばれます。

写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

 一方、大変なのは育成する側の上司だけではありません。部下も同じです。中には他人から追い込まれないと、本来持っている力を発揮できない人もいます。脱ストロングマネジメントが進めば上司は自分を追い込んでくれなくなるので、外発的な成長機会は減ってしまいます。

 「上司に怒られないから、今のままでいいんだ」と勘違いする人は成長機会を失ったままとなり、自らの手で自らに負荷をかけられる人との間で顕著な差が生まれていくことになります。

 パワハラに限らず、セクハラにカスハラ、モラハラなどさまざまなハラスメントリスクが高まる一方の社会において、脱ストロングマネジメントの推進は必然とも言えます。ただ、職場としてはより強く生産性の高い組織を構築していくために、部下育成を避けて通ることはできません。

 職場は部下自身が自己育成する機運を高めると同時に、上司たちにはこれまでの成長体験を捨てさせ、サーバントリーダーシップのような、プレッシャーを与えて部下を追い込む形とは異なる育成スタイルを習得させる必要があります。

 パワハラに対する意識が世の中で高まり続ける中、これから多くの職場にとって、部下育成と脱ストロングマネジメントの両立は重要課題の一つとしてより強く認識されていくことになるのではないでしょうか。

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