JR北海道「新幹線開業後」の明るい未来  札幌〜旭川間60分、札幌〜新千歳空港25分杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/6 ページ)

» 2024年04月13日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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札幌〜旭川間の高速化(中期経営計画以降の構想)

 北海道第2の都市、旭川は札幌から136.8キロメートルある。特急「カムイ」「ライラック」などの列車があり、最速の所要時間は1時間25分だ。こちらも軌道強化や線路改良、最高速度向上、高架化を実施し、所要時間60分を目指す。距離と時間を計算すれば、時速140キロメートルで走行できる車両を開発し、その車両がスムーズに走行できる線路にすればいい。

 しかし、机上の計算だけで成り立つほど話は簡単ではない。途中駅で減速、停車するし、ノンストップで走らせたとしてもカーブや分岐器などの減速を考慮すれば、時速160キロメートルで走行可能な車両が必要だ。ただし、全く不可能というわけではなく、現在は京成電鉄「スカイライナー」が時速160キロメートル運転を実施している。ただしこの路線は軌間が新幹線と同じ1435ミリメートルで安定性が高い。在来線では、北陸新幹線金沢延伸開業前に越後湯沢と金沢を結んだ特急「はくたか」の681系・683系電車が北越急行線内で時速160キロメートル運転した。

 スカイライナーとはくたかは、あらかじめ時速160キロメートルを想定して建設された線路で、そこを走る前提で車両が開発された。札幌〜旭川間の函館本線は直線的な複線で、取り組みやすそうに見える。京成成田アクセス線とほくほく線は新幹線並みの路盤だし、分岐器も新幹線と同じ「ノーズ可動式」といって、隙間を減らして高速通過できるタイプだ。必要な分岐器だけを交換するにしてもかなりのコストになりそうだ。

 コストを積み上げることを考えると、北海道新幹線を旭川へ延長した方が良いかもしれない。ちなみに北海道新幹線の基本計画区間の終点は旭川である。

北海道新幹線に接続するネットワークを強化(出典 「JR北海道グループ中期経営計画2026」https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20240401_KO_chukikeikaku.pdf)

 このほか、中期経営計画には記載されていないけれども、函館市が新函館北斗〜函館間のフル規格新幹線車両直通に向けて調査結果を発表した。実現すると、北海道新幹線で札幌〜函館間を乗り換えなしで直通できる。ぜひ前向きに検討してもらいたい。

 高速、大量輸送が鉄道の本分だ。観光面では座席に縛られたバスより快適な旅を提供できる。JR北海道は若年退職者も多いと報じられているけれども、将来の鉄道の姿をきちんと示せば、希望を持って働けるだろう。全てが実現すれば、JR北海道の未来は明るい。

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてパソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICETHREETREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


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