ここまで述べた通り、事業を進める上で欠かせない「見立て」「仮説」「計画」の3つの段階全てにおいて、相談が力を発揮します。
一人で考えて行動していては、見立てがいいのかも分からず仮説を磨く視野も狭まり、計画に一貫性があるのかも確認もできません。自分の考えが思い込みに縛られているかも分からないまま、行き詰まった状況を打破するネクストアクションも見出だせないため、いつまでたってもやりたいことの解像度も上がりません。
だからこそ、3つの段階全てにおいて「相談」というスキルを最大限に活用することが、事業を前進させやりたいことを実現する上での肝になるのです。
Q:優秀な社員(管理職)に相談の必要性を伝えたがなかなか相談しない。どうすれば相談するようになるか?
A:普段から足で情報を集めている人に相談する機会を作ってあげることをおすすめします。恐らくこの方(優秀な社員)は、これまで誰かに相談したものの「良い意見が出てこない」「自分より深く考えていない」など、相談して良かったという体験をしていないのだと想像します。
この方に限らず、優秀な人は頭の中で多くの仮説を立てられる、いわゆる“地頭の良い人”が多いのです。裏を返すと、妄想やWeb上での情報、過去の経験など、自分の頭の中だけの狭い範囲で考えている可能性が高く、相談する人も限定的になっていることが多い印象です。
反対に、地頭は良くないかもしれませんが足で現場の情報を集めている人は、普段からさまざまな人に相談しており、相談できるコミュニティーが広い場合が多いです。その場で自分の知らないことを知る人に出会えれば、過去の「悪い相談体験」が「良い相談体験」に変わるはずです。一人でできることには限界があります。そういう人とチームになれると一気に視野が広がるはずです。
トイトマ 代表取締役社長 山中哲男
1982年兵庫県生まれ。事業開発、事業戦略立案の専門家。2003 年に新規事業開発支援、既存事業の戦略立案をハンズオンで支援するインプレス(現:トイトマ)を創業し、代表取締役に就任。米国ハワイ州にて日本企業に対し、海外進出支援、店舗M&A 仲介にも従事し、丸亀製麺の海外1 号店などを支援。19 年に地域開発の新たなファイナンススキームを構築し展開するため、NEC キャピタルソリューションと共にクラフィットを創業し代表取締役に就任。他にも複数の企業の取締役、中央省庁政府の有識者委員・アドバイザー、大阪・関西万博2025事業家支援プロジェクトチームサブリーダーなどを務める。近著に『相談する力 一人の限界を超えるビジネススキル』(発行元:海士の風、発売元:英治出版)がある。
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