2023年11月に「電子契約くん」を導入した三井不動産レジデンシャルリースは、以前から、大量の書類を郵送でやり取りし、署名や押印を繰り返さなければならない顧客の負担を軽減し、社内の業務効率化を図りたいという思いがあったという。
「他の業界ではペーパーレス化が進む。不動産業界も技術的には不可能ではないだろうと考え、導入の検討を始めた」と同社情報システム部長の清水智晴さんは話す。
同社は今回、自社の基幹システムに、イタンジの「電子契約くん」をAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)で連携した。
連携による電子化の流れは、主に次の通りだ。
基幹システム上で自動生成した重要事項説明書、賃貸借契約書などのPDFデータが「電子契約くん」上にアップロードされる。仲介会社や申込者など契約に関わる署名者が記入する箇所は、管理会社が送信前に手動で入力枠を設定する必要があるが、テンプレートを利用することで入力項目を自動設定できるため、手動設定の手間が省ける。
仲介会社による重要事項説明の実施後、顧客に「電子契約くん」からメールリンクで契約書類が送付される。顧客は書類を確認後、契約合意ボタンを押すだけで電子署名が完了する。
「電子契約くん」の導入前は、こうした賃貸借契約業務を書類で行っていた。賃貸借契約は、1件につき平均約75枚程度の書類を要するという(重要事項説明書や登記簿謄本、行政が作成するハザードマップ、賃貸借規約書、保証委託契約書、入居ガイドブックなど)。これらを印刷し、ファイリングする作業はかなりの手間と日数がかかっていた。
同社は、首都圏を中心に年間約2万2000件の新規賃貸借契約を実施する。このうち、約3割にあたる7200件の個人契約で電子契約を導入している。年間最大約54万枚の紙の削減を見込み、環境への配慮の取り組みにもつながっている。
あわせて、契約業務の電子化に伴い、顧客と書類の郵送やりとりが不要に。顧客は印鑑登録証明書の取り寄せや、仲介会社への来店も不要になった。
電子契約に対する顧客の反応も良好だという。「当初はどれくらい受け入れられるか分からなかったが、始めてみると、電子契約を希望する顧客の方が感覚としては多い」と清水さんは話す。
同社は「電子契約くん」を導入する以前の2020年9月以降、イタンジのサービス導入や自社開発により、内見予約、申込、マイページでの書類受け渡しなどの手続きを電子化。今回の「電子契約くん」の導入で、内見予約から契約までの全てのプロセスで電子化を実現した。
清水さんは「単に電子化を図るのではなく、顧客の利便性とサービスの品質向上を第一の目的とし、さらに社内の生産性や事務作業の精度向上を目指した」と振り返る。従来の業務の形を見直すには「業務全体を一からデザインする視点が必要」だと話し、「今後も単なるSaaSの仕組みを導入するだけでは成しえない価値を創造していきたい」としている。
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