そもそも、製造業の「労災死亡者」は近年減少傾向だった。というよりも、「激減」をしていなければおかしかったのである。日本の製造業就労人口は2002年に1202万人だったが、2022年は1044万人まで減少した。つまり、この20年間で日本は、福岡市の人口158万人と同じ「工場労働者」が消滅しているのだ。
労働者の総数が激減しているのだから、「蟹工船」のような劣悪な工場でない限り労災事故も当然、激減していく。実際、厚生労働省が2022年に発表した労働災害発生状況によれば、製造業での労災死亡者数は140人。2017年に比べて20人減少している。
しかし、労働者の数は激減しているにもかかららず、どういうわけかじわじわと増えている労災がある。それは「休業4日以上の死傷者数」だ。2022年は2万6694人で、2021年と比較して270人も増加。これはコロナ禍の反動など理屈をつけることもできるが、2017年と比べても20人増えているのだ。
つまり、人口減少で急速に縮んでゆく日本の工場の中でどういうわけか、4日以上も休まなくてはいけないほどの重い労働災害に遭っている労働者は減るどころか、じわじわと増えているのだ。
では、なぜこんな「異常」なことが起きるのか。その謎の鍵を握るのが、冒頭で紹介した「工場死」だ。お亡くなりになった方たちの中に、何かしらの機械などに挟まれたり、巻き込まれたりというケースが多いことに気付くだろう。実は今、工場での「はさまれ・巻き込まれ災害」が増えているのだ。
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