はて? 大都会にある「サンシャイン水族館」の海水はどこからくるのか 担当者に聞いた週末に「へえ」な話(3/5 ページ)

» 2024年05月04日 06時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

300キロ離れたところから運ぶワケ

 安田さんの話を聞いていて、2つの疑問が浮かんできた。1つは、なぜ300キロも離れたところの海水を運んでいるのか、である。同じ海水であれば、東京湾の水でもいいのではないか。芝浦ふ頭の海水をトラックに搭載して、水族館まで運ぶといったフローにすれば、手間は大幅に削減できる。

 この質問に対して、安田さんは「魚の負荷を考えれば、東京湾の海水を使うのは難しいですね」と答えた。どういう意味か。東京湾の海水は以前に比べてずいぶんきれいになったと言われているものの、水槽の中で魚を飼育していくには「不純物」が多い。不純物が多ければ多いほど、魚に負荷がかかって、病気にかかるリスクが高まる。というわけで、手間はかかってしまうが、「東京湾<<<八丈島の近海」なのである。

オーストラリアの海〜グレートバリアリーフ〜

 もう1つの疑問は、海水プラントの導入である。長い歴史の中で「そろそろ海水プラントを設置してもいいんじゃね」といった会話は出てこなかったのか。古い話になるので記録が残っていない部分もあるが、水族館をオープンするにあたって「海水を運んでくるか、プラントを設置するか」といった議論があった。しかし、いまのプラントと比べて、当時のモノは性能面で劣っていたので、海水を運ぶことにしたそうだ。

海月空感のクラゲトンネル
海月空感のクラゲスクリーン

 ふむふむ、それはなんとなく理解できる。水槽の中で生きている魚のことを考えれば、「本物の海水のほうがいいよね」といった会話があったことは想像できる。しかし、だ。水族館がオープンしてから、46年の月日がたっている。プラントの性能も向上しているはずなのに、なぜいまも海水を運んでいるのか。

 「これまでもプラントを設置してはどうかといった議論がありました。ただ、スペースの問題がありまして。水族館を運営するにはさまざまな設備が必要なんですよね。アレも置いて、コレも置いてといった状態なので、プラントを設置するスペースがなくて、実現に至っていません」

 物理的に「狭い」という問題を抱えながら運営を続けているわけだが、サンシャイン水族館にはもうひとつの課題がある。「重さ」だ。

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