高速道路「休日1000円」は失敗だったか 「高速サブスク化」のメリットとデメリット(2/4 ページ)

» 2024年05月12日 18時23分 公開
[産経新聞]
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渋滞は「全日定額ならさばける」

 昨年5月、近藤さんは参院国土交通委に参考人として出席、定額制のメリットを説明した。一方で政府側は一連の答弁で、次の3つのデメリットを示した。

 1つ目は「激しい渋滞が発生する」というもので、「休日千円」の際、毎週末に大型連休並みの渋滞が発生し、特に東名、名神両高速では約3倍の渋滞となって、物流に悪影響が出たことを念頭に置いている。

 これについて、近藤さんは「休日千円はよく『失敗』といわれているが、もともと渋滞しやすい休日のみ実施し、ピークをよりピークにしてしまった。全日定額制ならさばけると考えている」と指摘。さらに、定額制にすると出口で料金所がいらなくなるため、現在10キロに1カ所程度ある出口について、首都高速のような簡易な出口を増やすことで、車が分散化して出口渋滞を解消できるとした。

 また、休日千円が行われた平成21年ごろはまだ、新東名高速は開通していなかった。24、28両年の静岡、愛知両県での新東名の開通により、東名高速の渋滞はかなりの程度解消されている。

 2つ目のデメリットの指摘は、岸田文雄首相も触れた「ほかの交通機関へ悪影響が出る」というものだ。国交省によると、休日千円の際は高速バスの利用者が1割減、フェリーの旅客が2割減る悪影響を受けた。一方で鉄道の利用者数に大きな変化はみられなかったという。

 近藤さんは、鉄道への影響がほぼなく、休日千円ではバスは対象外だったことに言及した上で「ほかの交通機関へ影響を及ぼしたとしても、全体として国富が増えるかどうかのほうが大事ではないか」と応じた。国交省の調査で、都道府県をまたぐ移動手段の約75%は乗用車利用との結果が出ている。

 栗岡さんらによると、そもそも距離制の料金制度は、昭和30年代に名神高速を建設する際、同時期に建設されていた東海道新幹線から利用客を奪わないように配慮されたためとの話もあるという。

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