人と人が信頼関係を構築するときに「相手の話をじっくり聴く」ことが最も重要であるといわれています。最近では傾聴のスキルは、ビジネスパーソンの必須の能力とされています。とはいえ、リーダーにとってメンバーの話を本当に親身になって聴くことは、それほど簡単ではありません。その「難しさ」のゆえか、聴くことを巡っては、次のようなリーダーとメンバーの認識の食い違いが頻繁に起きています。
ある日のリーダーとメンバーの心の声
リーダー:今日の1on1では、メンバーの話をじっくり聞いたぞ。70%くらいの時間は自分が聴いていたと思う。
メンバー:今日の1on1もリーダーが90%くらいしゃべっていたな。人の話を聴くことができない人なんだよなぁ。
こういう状態が続くと、リーダーとしてはしっかりと信頼関係や心理的安全性が作れていると思っていたとしても、メンバーが全く違う認識を持っていて、どこかで関係が破綻してしまうかもしれません。なぜ、聴くことは難しいのでしょうか。
株式会社スコラ・コンサルト プロセスデザイナー。
クラシック音楽の作曲家として長年活動してきたユニークなバックボーンを持つ。
自身の芸術創造の経験をビジネスに応用し、一人一人が“らしさ”を解放し、また多様な個性が織りなす、ゆらぎや葛藤を新価値創造の源泉として生かしていくような、ダイナミックな社会と組織をつくる支援をライフワークとしている。
前職では、大手小売業の人事部門で教育体系の構築や採用戦略策定、人事制度策定に携わり、自ら変革当事者として積極的に取り組んだ経験を持つ。
スコラ・コンサルトに加わってからは、人事課題をはじめ、ミッション・ビジョン・バリュ−策定、戦略ビジョンなど、経営課題の全般にわたる知識体系を生かし、本質的な経営課題をあぶりだすアプローチを得意とする。「人間とは何か」という問いに昔から心引かれており、心理学や仏教をはじめ、哲学、東洋思想にも造詣が深い。
共著に『わたしからはじまる心理的安全性』(翔泳社)。
リーダーがメンバーの話を聴くことが難しいとき、そこにはいくつもの「恐れ」があります。リーダーも部下の話をしっかり聴きたいという思いを持っています。しかし、それを覆い隠してしまうような「無意識の恐れ」が実は心の奥に眠っているのです。
怖れの例
リーダーは、このような恐れや不安を感じて、無自覚でメンバーの話が聴けなくなっているのかもしれません。そんなときは、まずはメンバーの話を3分間聴き続けてみましょう。
メンバーの話を聴いていると「でも」と口をはさみたくなるときがあると思います。それでもグッと我慢してとにかく3分間聴いてみるのです。そして「そう考えているんだね」「よく分かったよ」と、メンバーの話をしっかりと受け止めましょう。
メンバーの考えがリーダーの考えと違ってもよいのです。受け止めるとは、あくまでも「あなたがそう考えていることは分かりました」というスタンスを示すことで、メンバーの意見の内容に賛同しているわけではありません。
まずはしっかりと受け止めてから「そう考えている背景を教えて」「私の考えを言うね」という風に、対話を発展させていきます。この時はため込んでいた分、自分の意見をいろいろと言いたくなると思いますが、話しすぎないように注意しましょう。
「話を聞いてくれていると思ったけど、結局自分の意見が言いたかったんだな」などと思われてしまったらもったいないです。このような対話の流れを作ることができるかどうかは、最初の3分間で聴き続けることにかかっているのです。
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