なぜ、3年で4回も値上げしたココイチが好調なのか 客単価1000円を突破、驚くべき“太客”の存在(3/4 ページ)

» 2024年05月22日 05時00分 公開
[山口伸ITmedia]

もともと安売りしておらず、一定数の太客が支えている

 ここ数年で店舗数が大きく増えたわけではなく、既存店の売上増が業績に貢献している。2020年2月期を基準とした2023年2月期、そして2024年2月期の既存店業績(国内)は次の通りである(月次業績を基に筆者が算出)。

2023年2月期:客数84.9%、客単価107.5%、売上高91.2%

2024年2月期:客数88.2%、客単価116.2%、売上高102.3%


 2024年2月期はコロナ禍前と比較し、客単価が16%も増えている。客数も9割ほどを維持したため、売上高が以前の水準を上回ったことになる。客足は以前ほど回復していないが、ファンは付いており、ココイチの値上げ耐性が強いことを表している。飲食チェーンでは通常、客単価の増加以上に客数減の影響が大きく、値上げが業績悪化につながる例が多い。

 ココイチが値上げに強い理由として、もともと「高い」イメージが定着していたことがあるだろう。

 近年の値上げが目立っているが、2012年でも客単価は約850円だ。わずか500円のワンコインランチがトレンドとなっていた当時の基準からして、決して安くない水準である。トッピング次第では1000円を超えるのも一般的だった。当初からココイチ側は安売りを訴求しておらず、客も価格をある程度受容していたため、度重なる値上げにも耐えたと考えられる。

 さらに、ファンを魅了しているのが冒頭でも挙げた自由度の高さだ。ご飯の量や辛さ、トッピングを自由に選べるのは飲食における楽しみの一つでもある。ココイチを訪れる客の約4割は2品以上のトッピングを選ぶといい、自由度を求めている客が多いことが分かる。実際、SNSでもトッピングを楽しむ消費者の意見を多く見かける。先述のシミュレーションの通り、2品以上のトッピングでは1000円を超えることから、4割の客は値上げ受容度の高い“太客”といえる。

 値上げ耐性の強さは、2023年に実施したキャンペーンの好調さに見ることができる。2023年の4月6日、ココイチは約300店舗の期間限定で「『  』カレー(ナナシカレー)』を発売した。

メニュー名の選挙も同時に行ったナナシカレー。その後「ホロ肉ドカンと豪快カレー」と命名(出所:プレスリリース)

 スプーンで触れるとほぐれる柔らかさに調理した豚肩ロースの肉塊が乗っており、価格は肉の量に応じて1501円・1951円・2371円の3段階(東京・神奈川・大阪)のメニューだ。客単価の1.5倍から2倍と、ココイチにしては高価格帯である。当初は4月18日まで実施予定だったが、好調により一部店舗では発売から1週間後の13日から順次終売となったという。

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