コナン映画新作、興収135億円突破 3世代のファンを離さないコンテンツの“トリック”エンタメ×ビジネスを科学する(2/3 ページ)

» 2024年05月27日 08時00分 公開
[滑健作ITmedia]

ポケモン、サザエさんとは異なる「強さ」

 1つ目の要因は、原作30年、映画27年と、漫画・アニメ・映画の3つのチャネルを長期間にわたり継続してきた点にある。

 この継続性により、消費者との接点を維持することができた。そして、名探偵コナンを読んだり見たりして育った世代が、いまでは親になり家族で楽しむようになっている。1980年代以降に生まれた世代ならば、このタイトルを知らない人・世代がほぼ存在しない。

 極めて高い認知度と継続的な人気を誇るコンテンツは、『サザエさん』『ドラえもん』『アンパンマン』『ポケモン』などがあげられる。しかし、漫画・アニメ・映画の3つのチャネルを長期間継続できているのは、筆者が知る限りドラえもんとコナンシリーズだけである。

サザエさん 『サザエさん』は文句なしの長寿コンテンツだが、消費者が主に接するのは専らテレビアニメだろう(出所:公式Webサイト)

 当然ながら、このように複数の世代にまたがって人気を継続させるのは非常に困難だ。

 原作、アニメ、映画の各媒体で作品の人気が可視化されるため、ビジネス的にも打ち切りや終了のリスクが常にある。コナンの映画においても右肩上がりで成長したわけではなく、2004〜2008年にかけて停滞期があった。この時期、テレビアニメの視聴率も低迷していた。

 この停滞期を乗り越えられた一因として、讀賣テレビ放送が制作・製作※に携わり、映画の製作委員会にも参加していたことが挙げられる。過去の記事でアニメの製作委員会についてふれたが、まさに製作委員会のメリットを最大限に活用できたといえるだろう。讀賣テレビ放送、日本テレビ放送網、小学館といった基盤とノウハウを持つ企業の努力に加え、何より原作者の青山剛昌氏が継続して作品を生み出し続けたことが、シリーズの継続と人気の維持につながっている。

※本稿ではアニメ映像そのものを作ることを「制作」、アニメ作品をプロデュースし、プロモーションし、流通網にのせることを「製作」と表現する。

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