企業経営の基本となる、ヒト・モノ・カネといった資源要素を適切に分配し有効活用するERP(企業資源計画)。ERPをはじめとする企業のIT投資に対し、効率的な方法を顧客に提案するのが米ラスベガスに本社を置くリミニストリートだ。同社ではITシステムを無理に更新せずとも、現行のシステムのままのセキュリティ維持や、クラウド化への移行支援などを顧客に提案している。
日本法人は2014年に創業し、これまで400社の顧客を有する。企業はいったいどのような考え方をすれば、ERP投資を効率良く実行できるのか。リミニストリート流の方法を米本社のCEO兼会長Seth Ravin(セス・ラヴィン)氏と、日本法人社長の脇阪順雄氏に聞いた。
――リミニストリートは、どんなビジネスモデルの企業なのでしょうか。
ラヴィン: 当社は数千人の社員を擁していて、22カ国で事業を展開しています。ビジネスモデルは第三者へ保守サービスを提供することで、ほとんどがそれをリモートで行っています。私どもは日本法人を立ち上げて10年目になり、米国の本社では約20年間ビジネスをしてきました。
リモートで企業をサポートする体制は、欧米ではそこまで珍しくなかったのですが、10年前は日本の大手企業からすると新しい取り組みでした。私どもは世界17カ国に拠点を置き、そこでは現地のエンジニアが在駐しています。われわれは顧客の企業ごとに担当エンジニアを配置していて、現地の言語でサポートを提供しています。
第三者のIT保守サービスに加えて、現在は提供しているソリューションの種類も拡大しています。今ではエンドツーエンドのITサービスに対応するようになりました。
――各ソフトウェアベンダーは最新の製品を企業に勧めるわけですが、こうした中リミニストリートでは少し前の製品を最新版にせずに、そのままでも使い続けられるソリューションを提供しています。その保証期間は15年間に及びます。まさに対極的なアプローチだと思いますが、どのような考え方から生まれたものなのでしょうか。
ラヴィン: 一昔前の製品をなるべく高寿命に使う考え方は、私が前職のピープルソフト(2005年にオラクルに買収されたソフトウェア企業)にいた際に、サポートポリシーの責任者を務めていた経験から生まれたものです。当時私は、自社ソフトの「このバージョンは何年何月までサポートする」ということを決める役職だったのです。
私のチームで「サポート期間は何年何月までにしましょう」と発表するたびに、顧客からはいろいろなクレームが上がってきました。その内容は「そういったニーズはありません」「費用対効果が悪い」といったものでした。
さまざまな意見を聞いて痛感したのは、たとえ大企業であっても、ヒト・モノ・カネ・時間といったものは無限にあるわけではなく、IT投資の効率性を上げたい強いニーズがあることでした。
一方のソフトウェアベンダーにとっては、私のいたピープルソフトを含め、やはり利益を生まねばならないということでアップグレードを勧めている背景はあります。そこには決算期などの思惑も重なりますから、ソフトウェアベンダーがアップデートを決めるタイミングは顧客にとって都合のいいものではなく、ベンダーの戦略にとって都合がいい部分もあります。こうした事情は今のユーザー、企業の方々もだんだん気付いていると思います。
――ベンダーの方針に従うことが、企業にとって必ずしも最適なコストパフォーマンスとは限らないわけですね。
ラヴィン: リミニストリートが顧客とまず話をするのは、費用対効果の話です。われわれは決して自分たちのサービスを売り込むビジネスモデルではなく、顧客の現状を聞いて、このソフトウェアベンダー、SIerであればこういうプランで、われわれだったらこういうプランだと比較して考えてもらいます。「御社の事業の価値を創造するためにはどちらがいいですか」を顧客に決めてもらっています。
約20年間企業と接していて思うのは、企業は必要性があればどんどん変わるという点です。それは日本のような保守的な市場でも例外ではありません。日本でも実感したのは、コロナ禍前は電子サインによる契約はまずなかったのですが、今では70%の顧客が電子サインに移行しています。かつて日本の企業ではなかなか電子決裁は難しいと言われていましたが、すぐ変わりました。これは、日本の企業が今までERPにかかっていた保守コストを節約することで得た資金を、新しい稟議決裁システム、電子署名システムに投資できたからだと考えています。
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