背景を探る前に状況を整理しよう。イオンはツルハHDの子会社化に当たり、まずツルハ株の約13.6%を、香港の投資ファンドであるオアシス・マネジメントから買い取る方針だ。イオンは既にツルハ株のうち約13.9%を保有して筆頭株主となっているが、合わせると3割近くを保有することとなる。そうしてツルハはひとまず、イオンの持分法適用会社となる。
一方のウエルシアは現在、株式の約50.5%をイオンが保有しており、イオンの有力な子会社の一つである。そこで株式移転という手法を用いて、ツルハがウエルシアを完全子会社にする。ウエルシアはイオンに対して「孫会社」になるということだ。
今までのブランド名は継承する予定で「ウエルシア」「ツルハ」などといった店舗名は経営統合後も続いていく方針を示している。新生ツルハの社長は、現ツルハ社長の鶴羽順氏がそのままスライドするのではないかといわれている。
イオンは2014年に、今回と似た手法でウエルシアを業界トップに押し上げたことがある。ウエルシアを子会社化し、その傘下に、CFSコーポレーション、タキヤ、シミズ薬品の3社を完全子会社として組み入れた。長らくトップに君臨していたマツモトキヨシHDを抜いてウエルシアが1位に立ったのは3年後の2017年だが、今度はツルハとのアライアンスでアジア1位を取りに行くというわけだ。
ところで近年のツルハは、モノ言う株主であるオアシス・マネジメントの提案に悩まされていた。オアシス・マネジメントは、ツルハのもっぱら創業家の利益を優先する、創業家支配を疑問視。企業価値や株主価値を上げるために、ガバナンス体制を改革し、低収益のため従業員の給料も上がらない状況から脱却することを求めていた。
ツルハは2020年より鶴羽樹会長の次男である順氏が、社長に就任。順氏の前に6年間社長を務めていた堀川政司氏は、創業家以外で初の社長だったが、健康上の理由で退任した。現在の取締役を見ると、会長の鶴羽樹氏、社長の鶴羽順氏が鶴羽家。M&A担当の小川久哉氏は、2007年にツルハが買収したくすりの福太郎関係者。ツルハグループドラッグ&ファーマシー西日本担当の村上正一氏は、これまた2009年にツルハが買収したウェルネス湖北に関係する人物だ。
つまり、ツルハHDは5人いる取締役(社外を除く)のうち、4人が“創業御三家”出身ということになる。鶴羽家、村上家、小川家のなれ合いで経営を行って、私腹を肥やし、企業価値を損ねていたのではないか――と、オアシス・マネジメントは迫ったわけだ。その意見に賛同する株主も、少なくなかった。
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