ツルハの社史を振り返ると、創業は1929年。100年近い歴史がある老舗企業だ。戦後はドラッグストアチェーンとして発展し、北海道でドミナント戦略を取って順調に勢力を拡大してきた。1995年にはジャスコ(現イオン)と資本業務提携を結んだ。背景には、当時業界1位だったマツモトキヨシが北海道進出を匂わせていたこと、一般用医薬品がコンビニなどでも販売できる規制緩和があったこと、さらには道外への進出も考えていたことなどがあった。
東証一部へと上場したのは2002年。このころからM&Aへと積極的に取り組み、2006年に500店を突破した。2024年5月時点では、グループ全体で2000超の店舗がある。近年では雑貨に強いという評価がある。
一方のウエルシアは、1965年に埼玉県春日部市で開業した「一ノ割薬局」をルーツに持つ。その後は調剤薬局併設の形で成功し、2000年にイオンと業務資本提携を結んだ。M&Aで業容を拡大し、商号変更で2002年にウエルシアとなった。2012年に東証一部へ上場している。グループ全体で2825店舗(2024年2月時点)を運営し、そのうち2155店が調剤薬局を併設している。業界では調剤に強いという評価があり、24時間営業の店が多いのも特徴だ。
今後の統合で、ウエルシア・ツルハ連合は、ハピコムやトップバリュといった共通のPBを強化しつつ、ウエルシアの持つ調剤、ツルハの持つ雑貨のノウハウを補完し合う協業関係となる。地域的に見ると、ツルハは北海道・東北・中国・四国・九州に強い。ウエルシアは関東と関西に強く、補完関係にある。
では、残された東海と北陸はどうなるのか。このエリアに比較的強いのが、ハピコムグループで石川県発祥のクスリのアオキだ。今後、クスリのアオキの統合に向かうのか注目が集まる。
最後に、ウエルシアとツルハの経営統合を発表する記者会見に登壇した3人(イオン・吉田昭夫社長、ウエルシア・松本忠久社長、ツルハ・鶴羽順社長)のうち、松本氏は私生活で社外の女性と不適切な行為があったとして辞任している。イオンとやや距離を置いていたと見られたツルハが、モノ言う株主の攻勢で再度急接近し、ウエルシアの3兆円構想に乗り、その構想を打ち出した社長は事実上更迭。この経営統合劇、まだまだ波乱含みの予感がする。
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
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“九州の覇者”コスモス薬品に、ウエルシアが真っ向勝負 ドラッグストア戦争の行方は?Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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