「富士山ローソン」問題 黒い目隠し幕にたくさんの穴、なぜ区分けしなかったのかスピン経済の歩き方(5/6 ページ)

» 2024年06月05日 06時22分 公開
[窪田順生ITmedia]

本来は国がやるべき仕事

 という話をすると「そんな大掛かりな情報発信は、河口湖町のような自治体では難しいのでは?」という意見が聞こえてきそうだが、まさしくそれが日本のオーバーツーリズムの元凶だ。

 今お話をしたように戦略的に新しい観光地を創出して、外国人観光客たちの動線を変えていくゾーニングは、1つの自治体がやれるようなものではない。今回でいえば、富士山周辺の人の流れを見て富士山コンビニへの誘導を考えていくので、富士宮市や富士吉田市など自治体の垣根を超えて、地域観光を俯瞰(ふかん)していく視点が必要不可欠だ。

 つまり、これは本来は日本政府観光局がやらなくてはいけない仕事なのだ。

 しかし、残念ながら日本の観光行政は縦割りなので、個々の自治体が細切れの観光戦略を打っている。政府観光局には口を挟む権限もないし予算もない。だから結局、オーバーツーリズムも「自治体の頑張り」という根性論で解決するしかない。

富士山ローソン(出典:ゲッティイメージズ)

 世界各国から人々が訪れる撮影スポットができたのだから、もうちょっと建設的な議論をしてもいいはずだが、とにかく「クサイものにフタ」と言わんばかりに「農業用の遮光幕」で撮影禁止にしてしまう。

 日本を代表する観光資源のオーバーツーリズム対策にしてはあまりにセコく感じてしまうのは、日本の観光政策がお粗末だからなのだ。

 そして、このお粗末さが世界に発信されてしまうことも、われわれは肝に銘じなくてはいけない。

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