なぜヒグマ駆除が「日当8500円」なのか 背景に、働く人の責任感に甘えすぎる問題スピン経済の歩き方(1/7 ページ)

» 2024年05月29日 10時56分 公開
[窪田順生ITmedia]

 「高校生のコンビニのバイトみたいな金額でやれ。ハンターばかにしてない? って話ですよ」

 北海道猟友会砂川支部 奈井江部会の山岸辰人部会長は地元テレビ局の取材に対して、そんな不満をぶちまけた。

 北海道空知地方の奈井江町がハンターたちにクマ出没時の駆除を要請したのだが、その日当がたった8500円(発砲した場合は最大1万300円)しかなかったという騒動だ。

クマの被害が増加している(画像提供:ゲッティイメージズ)

 この日当に山岸部会長が不満を漏らすのも無理はない。2023年、クマの人身被害は過去最多だった。中でも北海道では、大学生を殺して遺体の一部を食べ、捜索にきた消防団員まで襲ったヒグマも現れた。「宇宙船地球号に乗る同じ仲間」みたいなきれい事では済まされない現実もある。

 そこで頼りにされているのがハンターの皆さんなわけだが、当然「ボランティア」などと今どき虫のいい話はない。休業補償も必要だし、現地へ向かうための燃料費も値上がりしている。ということで、奈井江町の周辺自治体ではクマ駆除の「賃上げ」が相次いでいた。

 例えば、隣接する浦臼町は出動したハンターに対し、駆除の有無にかかわらず1日1万5000円を支払う。同じく隣接する芦別市は出動1回で1万1000円、駆除した場合は1頭3万円を支払っている。

 しかし、奈井江町は日当8500円。「ねえ、オレらのことナメてるでしょ」と町に対してカチンとくるのは当然かもしれない。

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