さて、そこで話を今回のクマ駆除に戻そう。猟友会の皆さんは、狩猟免許という特殊な技術を持っている。本来ならば、自治体はその希少性、特殊性をかんがみた高い報酬を支払うのが筋だが、自治体としては当然、コストは低く抑えたい。そこで日本人が幼い頃から受けている「責任感教育」を利用したのだ。
先ほども申し上げたように、日本人は「みんなのため」と言われるとおとなしく従う傾向がある。しかも、「組織のルール」にも従順だ。つまり、「みんなのためにクマ駆除に協力してください。報酬は日当8500円。これは町で決めたルールなのでご了承ください」と高圧的に要求をすれば、ハンターの皆さんも「安いな」「やってられねえよ」と愚痴りながらも従ってくれる、と踏んだのだ。
しかし、物事には限度がある。これだけ物価が上昇して賃金が上がらず、急速に日本人が貧しくなっていけばどんなに「責任感」をちらつかされても、奈井江町のハンターたちのように「ノー」と言う人たちは増えていくはずだ。
筆者がこのように考えるのは、やはりクマ駆除をする猟友会の皆さんと同じような境遇の人々が「労働者の責任感に甘えすぎている問題」に直面しているからだ。
その代表が、災害時には地域に密着して人命救助や避難支援をする「消防団員」だ。あまり意識したことがないだろうが、実は消防団員とクマ駆除に駆り出される猟友会の皆さんはよく似ている。
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