この異常なまでの搾取具合は、さながら「ブラック企業」のそれとそっくりではないか。
ご存じの方も多いだろうが、ブラック企業には「やりがい搾取」というものがある。社員に「夢」「自己実現」「成長を実感」「絆」など「やりがい」を与えることで、常軌を逸した低賃金や長時間労働に耐えさせるというものだ。
勘のいい方はもうお気付きだろうが、実はハンターや消防団員の方たちが直面している「働く人の責任感に甘えすぎる問題」というのは、この「やりがい搾取」の一種だ。
「地域社会の安全を守る」「地域防災の要」など「やりがい」を与えて、「私がやらなくては誰がやるのだ」と責任感を刺激する。もちろん、そこまでは決して悪いことではないが、問題はその労働に見合うだけの対価を支払わないことだ。だから、ブラック企業から従業員がどんどん逃げ出すように、クマ駆除や消防団にも人が集まらない。
つまり、今回の問題は、人口減少かつ低賃金で貧しくなった日本でいよいよ国や自治体もブラック企業のように「やりがい搾取」に力を入れ始めてきたことを示しているのだ。
というわけで、公共事業など政府や自治体から仕事を請け負う企業の皆さんは、安く買い叩かれないように気をつけていただきたい。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受
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