そこで、社内メディアの明確なターゲットを定めていくことが必要となる。社内メディアのターゲットだけでなく、各企画にもターゲットを設ける。
社内メディアの目的が、読者の行動変容を促すことであるなら、社内のインフルエンサーだけに読んでもらい、そこを起点に社内にムーブメントを起こしてもらっても良いはずだ。そこまで極端に考える必要はないかもしれないが、自社の中心となる階層を第1のターゲットとして、そこに刺さる企画を掲載しつつ、会社を変えていく──ということができるのは、社内メディアの可能性の一つである。
例えば、ある水産会社の社内メディアのターゲットは「課長」だ。そこでは、課会で社内報のブレークダウンがされるという文化があるため、課長レベルに刺さる企画を中心に据えている。
ある中堅スーパーでは、店舗の主力であるパートやアルバイト店員が社内報に登場する機会を多く設けることで、現場に刺激を与えられるよう工夫している。あるメーカーでは、次の時代を担う戦力を鼓舞したいという目的で、30代の中堅社員をターゲットとしている。このように、社内メディアの目的に照らしたターゲットを設定する。
そして、さらに各企画におけるターゲットを細かく設定していく。「マイターゲット」という言葉がある。社内メディアの企画立案者が、具体的な社員をイメージしながら企画立案していくのだ。
「経理部のAさんは、どのような企画であれば読み、また共感してくれるだろうか」「営業のBさんだったらどうだろうか?」と、具体的な社員をイメージしながら「刺さる」企画を立案し、編集していくのだ。「刺さる」企画は、ターゲットを明確にすることで生まれる。
会社という環境において、社員が最も興味を持つ対象の一つが「人」だ。社内メディアにおいて自社の社員を主役級に取り扱うことで、読者を引き込む。
客観的な仕上がりになってしまいがちなニュース記事であったとしても、その話題に関係する社員に語らせ、その社員自体をフックにする。部署の一員ではなく、「あなた自身」はどう思うのかを問い、社員に本音で語ってもらえば、人間らしさのあるコンテンツに仕上がるだろう。
また、身近な社員が実行していることを掲載するのも、鉄板の手法だ。読んだ社員が「自分にもできる」と思うことで、行動変容につながっていく。
読者に当事者意識を持たせ、また共感してもらうには、同じ境遇、立場、職種、階層、年代──といった共通点のある人物を登場させると良い。同じ〇〇の人は読んでしまうし、刺激を受ける。つまり、ターゲットを絞り、そのターゲットに読ませたいのであれば、そのターゲットを登場させ、事例を中心に「本音」で話してもらうのが最も効果的である。
「読まれてなんぼ」の社内メディアではあるが、実は、読者以上に登場者への影響が大きい面もある。自分が登場していると、当然ながら本人は読み、保存し、家族に見せる。その効果は、いち読者として受けるものよりも大きい。「刺激を与えるために登場させる」ことも社内活性化のための一つの手段だ。
社内メディアが複数あり、例えば、印刷社内報とイントラネットのように異なるメディアがある場合は、その特性に合わせたコンテンツ作成が求められる。じっくり読ませるなら印刷社内報、速報性のあるニュースなどは電子社内メディアに掲載するのが基本だ。
その上で、作り手としては「両方読んでもらう」ことを目指したい。例えば、イントラネットで速報性のあるニュースを掲載したら、その詳細部分、特に人物を中心としたストーリーを印刷社内報に掲載する。そして、関連資料をイントラネットに格納し、詳しく知りたい人はそこに見に行くといった工夫も可能だ。それぞれのメディア特性を上手に使って、インパクトを与えていきたい。
株式会社月刊総務 代表取締役社長/戦略総務研究所 所長/(一社)FOSC 代表理事/(一社)ワークDX推進機構 理事/ワークフロー総研 フェロー
早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)FOSC代表理事、(一社)ワークDX推進機構の理事、ワークフロー総研フェローとして、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。
著書に、『リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター、以下同)、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』、『経営を強くする戦略総務』
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