かつて総合カタログ通販企業といえば、ニッセン、千趣会、セシールが御三家と呼ばれていた。残る2社のその後もみてみよう。
セシールはニッセンよりも少し早く、2000年代初頭から業績の落込みが顕著になっていく。2006年にはライブドアに買収され、2010年にはフジ・メディア・サービス(ディノス)の完全子会社となり、上場廃止に至った(図表4)。現在はさらに株主が変わり、上場家電量販店ノジマの子会社となっている。
千趣会についても、2012年12月期以降は減収が続き、直近の売り上げは492億円まで縮小した(図表5)。ちなみに千趣会は2020年、JR東日本と資本業務提携(出資比率は議決権ベースで12.46%)し、ECモールやJREポイントでの連携を行っている。このように、かつてのカタログ通販御三家はその存在感を失い、他社との連携で活路を見出そうとしているのが現状だ。
カタログ通販が衰退へと向かっていく中で、唯一、業績を伸ばしていたのがベルーナ(埼玉県上尾市)である。図表6はベルーナの売り上げ、営業利益の推移だが、これまで見てきたカタログ通販御三家とは、全く異なる軌跡をたどっていることが分かるだろう。2022年までは右肩上がりで利益も堅調に拡大傾向にあったが、最近少し伸び悩んでいる、といった状況であり、御三家と比べると極めて順調といっていい。
ベルーナがここまで強いのは、ECシフトの影響が少ない高齢女性層(2010年代時点の60代以上、特に70代以上の女性層)に特化したシニアマーケティングを徹底したことにある、といわれている。この層は時代の推移とともにECにシフトしない人も多く、そうした層の発掘、リピート管理に優れていたことで、御三家と大きな差がついた。
また、ベルーナは不動産事業の育成に加え、化粧品事業、看護師向け通販、呉服販売、EC通販企業などをM&Aで傘下に入れた。商品の多様化、事業の多角化を進め、収益を確保する部門の分散を着実に進めてきたことが大きく奏功しているのだ。
そして今、クレバーなベルーナが予想して備えた通り、シニア特化のカタログ通販さえも世代交代が進行。減収傾向は顕著で、部門としては赤字になり、他部門がそれを支える状態となった。ベルーナでも近い将来、カタログ通販ビジネスは他部門に代替されるようになるだろう。
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