生クリッチは社員のアイデアを商品化する「貝印開発コンペ」から誕生した。コンペは2021年に始まり、生クリッチは初開催のときに提案されたものだった。
提案したのは、研究開発本部研究部 次長の小林甫氏。「マニア」と自称するほどの生クリーム好きで、普段から自宅で200ミリリットルの生クリームを泡立てては、1人で全部、1回で食べきってしまうほどだという。
「食べている姿を見られると、みんなに引かれます」と話す小林氏が生クリッチをコンペに提案したのは、生クリームを泡立てることに不便を感じていたからだ。それが解決できれば自分のような生クリーム好きに喜ばれると思った。
小林氏が言う不便な点とは、泡立てるためのボウルを冷やさないといけないこと、ホイッパーを持っていなければならないこと、時間がかかること。泡立てると周囲に飛び散ってしまうことも、何とかしたいと思っていた。
コンペに提案する前、小林氏は身近な人たちに生クリッチのアイデアを話して反応を確かめたところ、反応は二極化した。
「『別に欲しくない』と全く響かない人がいた一方で、『お金がかかっても買うよ』とものすごく響いた人もいました。響かなかった人のほうが多かった印象ですが、うまくいけば響いた人に刺さるものができる感触を得ました」
提案から開発のゴーサインが出るのに要した時間は半年ほど。時間が経過するにつれて周囲の評価が変わっていった。小林氏はこう振り返る。
「最初は社内の反応が鈍く『売れないんじゃないの?』といった声が多かったです。言葉だけでは伝えきれないところがあったせいですが、試作品を示したあたりから響くようになり、『これ結構イケるかも』『これ欲しいかも』などと言ってくれる人が増えてきました」
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