今回のサイバー攻撃ではニコニコ動画のオンプレミス環境が狙われたわけだが、動画のデータはAWS(Amazon Web Services)のクラウドストレージであるS3というサービスに保管していたことで、ニコニコ動画(Re:仮)の早期リリースにこぎつけられたようだ。
一方でKADOKAWAグループは運用コスト削減のために、ITシステムを1つのデータセンターに集約していた。これが被害を拡大させたという見方もある。
確かにオンプレミス環境の構築は、自社のニーズに合わせたハードウェアやネットワークの最適化が可能であり、一貫したパフォーマンスを確保できる。大量のデータ処理やストレージに関するコストを自社で直接管理できるため、長期的にはコスト効率が良い場合もある。
しかし、オンプレミスには大きな初期投資と継続的な運用コストが伴う。冗長性を確保するためには、地理分散を含めた複数のデータセンターを設置する必要がある――というのが教科書的な説明だ。実態としてはそういった措置を取らず、リスクのあるオンプレミス集中運用をとる企業も少なくない。
対してクラウド化は動的なリソース調整が可能で、急激なトラフィック増加に柔軟に対応できるため、スケーラビリティとコスト効率がよい。データセンターは世界規模で分散されていることからサービスの継続性も高い。ニコニコ動画や生放送などのコンテンツもクラウド化の利点を享受できる立場にあり、実際にそれらのサービスはクラウドへの移行途中であったという。従って、ニコニコ動画が旧来のオンプレ環境に依存していたことが復旧長期化の原因であると断じるのは早計だ。
いずれにしても、ニコニコ動画のような大規模データストリーミングサービスを一から再構築するというのは本当に合理的なのか、冷静に判断すべきではないか。ニコニコ動画の有料会員数はここ数年下落傾向にあり、ピーク時の半分まで減少している。広告収入も右肩下がりであり「衰退期」とみる声も少なくない。そんなサービスを再構築するとして、どの程度まで行うかという経営判断にも注目したい。
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