鹿児島県唯一の百貨店にして、創業270年の名門企業である山形屋が借入金の返済に行き詰まり、グループ会社16社とともに私的整理の一種である「事業再生ADR手続き」に入っていると報じられた。百貨店業界以外にも大きな衝撃を与えたのは記憶に新しいところだ。
その後、事業再生計画は成立。山形屋は現在も営業しているが、「また経営が傾いたら閉店するのでは」という市民の不安が払拭(ふっしょく)されたわけではない。そこで前述したように鹿児島の地元紙『南日本新聞』が、「百貨店ゼロ県」の島根県松江市へ取材に行った。つまり、この記事は「山形屋再建」をテーマにした連載で、「百貨店がなくなった街がどんなに寂しいか」ということを鹿児島市民に知らしめる目的でつくられたものなのだ。
このような話を聞くと、なぜ新聞はそんなに「百貨店閉店でにぎわいが消えた」という方向へ話を持っていきたいのかと不思議に思う人も多いはずだ。
前出『南日本新聞』の記事に対して専門家なども指摘しているが、今日本の地方都市で起きている現象は「百貨店閉店でにぎわいが消えた」ではなく「にぎわいが消えたから百貨店が閉店した」が正しい。
では、なぜ“にぎわい”が消えたのかというと、ごくシンプルに人口減少だ。
2024年4月に総務省が発表した人口推計によると、2023年は前年比で59万5000人減っている。これは山形屋のある鹿児島市の人口と同じだ。
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