なぜ「うなぎビジネス」が盛況なのか “うなぎのぼり”が続きそうな3つの理由と大きな不安スピン経済の歩き方(5/7 ページ)

» 2024年07月10日 05時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

健全な飲食ビジネスの可能性の裏で問題も

 そういう意味においても、これからの日本では「うなぎビジネス」は大きなポテンシャルがある。それはただ高齢者が圧倒的なスピードで増えていくというだけではなく、「安さの奴隷」にならなくていいからだ。

 70代以降の高齢者などは「安さ」に魅力を感じて「本格的なうな重」を選択しているわけではなく、「おいしさ」や「精のつく食べ物」だから選んでいる。もちろん、これからは貧しい老人も増えていくので安いにこしたことはないが、牛丼やファストフードほど優先度が高くない。

 つまり、若者をターゲットに「うな丼が1000円以下で食べれます!」という安さのチキンレースに参戦することなく、2000〜3000円前後の価格帯で「本格的な鰻重が半額で食べれます!」という健全な飲食ビジネスができるのだ。

 このような話を聞くと、「よしっ! じゃあうちも今からうなぎ店に新規参入だ!」と前のめりになる飲食業の方も多いかもしれない。実際、マスコミ報道によれば、ステーキ店を廃業してそのまま鰻の成瀬のフランチャイズになる店も増えているという。

4月27日にオープンした「鰻の成瀬 上田店」(出典:プレスリリース)

 ただ、物事には何でも良い面と悪い面がある。高齢化の進む日本で「うなぎビジネス」が活況となっていけば当然、大手も参入するかもしれない。そうすると、うなぎの奪い合いになるので価格も上がっていく。しかも、牛肉や魚と違って「うなぎ特有のリスク」も関係してくる。

 ご存じの方も多いだろうが、うなぎは絶滅危惧種だ。国際自然保護連合(IUCN)は2014年6月にニホンウナギを「絶滅危惧IB類」としてレッドリストに掲載している。つまり、今後「うなぎビジネス」が活況となり消費量が増えれば、「限りある水産資源」として規制が強化されていく恐れもあるのだ。

 実際、業界関係者が「絶滅が始まっているのでは?」と心配するようなことも起きている。2024年度のニホンウナギの稚魚は不漁で、日本を含む東アジアでの捕獲量は前年度比で3割も少ない。これは5年ぶりの低水準だ。

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