嶺井: 大森さんは新規事業を立ち上げるときに、どのようなことが重要だと思いますか?
大森: 社会の本質的な課題を発見し、抽出する力は、すごく重要だと思っています。私の場合はセキュリティの分野に明るかったわけではないのですが、社内で気付いた課題をデジタルで解決しなければと考えたのが始まりでした。
そこからセキュリティ企業の方々に多くの時間をいただいて、改善するためにやるべきことや、業界のことを教えていただきました。そのうちに応援の声をいただくと、使命感に変わってくるんですよね。エゴだけで事業はやるべきではないと思っているので、きちんとマーケットとしてあるのか、世の中でどれくらいの規模をカバーしているのかも重視しました。
最も大事なのは、自分が人生をかけてこの問題を解決したいと思えるのか、これが実現するとどのような未来を描けるのかについて、確信が持てるくらい問い続けることです。南からは「絶対そこの感覚にうそをつくな」と強く言われて、ずっと大事にしています。
嶺井: 事業を立ち上げていく人は、確信を持って5年、10年やりきれることが大事だということですね。
南: 情報の集めすぎはないはずなのに、みんな情報を集めすぎないんですよ。今の時代はいろいろな方がさまざまなことを言って、多面的に世の中が動いています。事業を始めるときに、一つの課題や事象に対してあらゆる角度から話を聞いて、それを分析し、解析した上で戦略を考えてはいけない、というルールはないですよね。事業を始める前にそこを徹底的にやることを、大森さんには共有しました。
あとは自分で考えて自分で行動するだけです。Assuredのように急成長している事業だと、毎日ありとあらゆる判断の連続で、新たに調べる時間は取りにくくなります。それまで蓄積してきた情報と、進めながら得た情報をマッチさせながらシャープな判断をすることが、成長を止めない事業の立ち上げ方ではないかと思います。
嶺井: 南CEOは新規事業にどのような距離感で関わっているのでしょうか。
南: 月1回ですね。あとは、ここが勝負どころだと思うところに、何かできることがあるかを聞き続けて、言われたことを自分なりに考えて行動しています。
嶺井: 月1回の壁打ちのときは、どのようなことを確認しますか。
南: やることよりも、やるべきではないことを、自分の意見として指摘します。意見が割れたときは任せますね。自分の原体験をなるべく分かりやすく説明しますけども、フェーズも違いますし、事業の内容も違いますから、私の話を素直に受け止めることもあれば、絶対に違うと言って突き進むこともあるでしょう。自分で考えた結果としての失敗や成功を受け止めて、また改善していけばいいのではないでしょうか。
嶺井: 大森社長は、南CEOから言われたことで強く印象に残っていることはありますか。
大森: アシュアードの前に、AR(拡張現実)や、VR(仮想現実)などの技術を活用する領域のプロジェクトを進めていました。しかし、事業化が難しいと判断して、集まってくれた仲間にとってあまり良くない形で解散することになり、プロジェクトをリードしていた立場として、自分も会社を辞めようかと思っていました。
そのときに南さんから、「失敗はするものだから、もう1回挑戦しようよ」と言われました。事業をつくるのはすごく時間がかかることで、必ずでこぼこします。この言葉を聞いて、失敗したときやうまくいかないときにどういう姿勢で臨むのかとか、失敗しても機会を提供するとかが大事だと気付きました。
南: 挑戦するときにはリスクを取るべきで、そのリスクの計算の中には失敗も入っています。だから、失敗しない人間は、成功もしないんじゃないですか。失敗しない人はチャレンジしていない人だと思います。
嶺井: 大森社長は今後どんなチャレンジをしていきたいですか。
大森: Assuredの事業及び会社を、世の中を変える会社にしていくこと。もっと世の中にこういうことがあったらいいと思うことを、形にしていける会社を目指したいです。世の中にはいろいろな課題があると言われていますが、逆に言えば可能性にあふれていると思うんですよ。その可能性に挑戦して、楽しめるような組織でありたいですね。
嶺井: 南CEOはVisionalグループを今後もどのように成長させていたいと考えていますか。
南: 10年後どうなっていたいですかと聞かれたときに「今想像できないような姿になっていたいです」と答えています。想像もできないような事業領域になっていて、社会の課題に対して新しい解決策を提供している会社になる。そうなっていなければ、自分は必要ありません。そういう意味では、10年後や20年後には、違う経営者のもとで違う姿を求めている可能性もあります。ただ、現在のこの瞬間においては、自分がVisionalグループの代表です。最高の仲間と新しい歴史をつくりながら、分からない先の姿を追い求め続けるのが、経営者としての自分の姿だと思っています。
不確実で不透明な世の中だからこそ、ある意味でわくわくしますよね。これからも社会の課題を解決し、社会にインパクトを与え続けながら、新しいムーブメントを通じて世の中を革新していきたいです。
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