生成AIでデジタル戦略はこう変わる AI研究者が語る「一歩先の未来」
【開催期間】2024年7月9日(火)〜7月28日(日)
【視聴】無料
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【概要】元・東京大学松尾研究室、今井翔太氏が登壇。
生成AIは人類史上最大級の技術革命である。ただし現状、生成AI技術のあまりの発展の速さは、むしろ企業での活用を妨げている感すらある。AI研究者の視点から語る、生成AI×デジタル戦略の未来とは――。
ソフトバンクグループ(SBG)は8月、AIと精密医療のリーディングカンパニーである「Tempus AI(以下テンパス)」との合弁会社「SB TEMPUS(エスビーテンパス)」を始動する。遺伝子検査で得られた医療データをAIで解析。患者ごとに最適な治療を提案するサービスの展開を目的としている。まずはがん治療を対象に活用する予定だ。
6月27日の会見では孫正義会長兼社長によるプレゼンの後、孫氏とテンパスCOOのRyan Fukushima氏、医療関係者を交えて「ASI時代におけるこれからのがん治療のあり方」について、パネルディスカッションが開かれた。その模様をお届けする。
左から医療ジャーナリストの森まどか氏、孫正義氏(ソフトバンクグループ会長兼社長執行役員)、Ryan Fukushima(Tempus AI COO)、佐野武氏(がん研有明病院 病院長)、北川雄光氏(慶應義塾 常任理事/慶應義塾大学医学部 外科学 教授)、織田克利氏(東京大学大学院 医学系研究科統合ゲノム学分野教授/東京大学医学部付属病院ゲノム診療部長(併任))、馬場英司氏(九州大学大学院医学研究院 社会環境医学講座 連携腫瘍学分野 教授)、安藤雄一氏(名古屋大学医学部附属病院 化学療法部 教授・部長)、武藤学氏(京都大学大学院医学研究科 腫瘍内科学講座 教授/京都大学医学部附属病院 がんセンター長。以下撮影:乃木章)40年以上、日本人の死因1位である「がん」。年間の診断数は100万件を超える。がん研有明病院 病院長の佐野武氏は「今から40年前、がんは切除するしかないものだった」と話す。それから現在に至るまで、がん治療は急速に発展し、放射線や抗がん剤など、さまざまな治療法が確立されてきた。進化し続ける医療にAI解析サービスが導入されることで、近い将来、がん治療がより早く、より確実になる期待が高まる。
第1部で孫氏がプレゼンしたAI解析サービスについて、慶應義塾大学医学部教授の北川雄光氏はこう話す。
「がん治療は外科治療の時代から、あらゆる治療手段が重要な時代になりました。さまざまな選択肢がある中で、私たち医療関係者の労力が追いついていないように感じます。新しいテクノロジーが時代を切り開いてくれると期待しています」
東京大学大学院医学系研究科統合ゲノム学分野教授の織田克利氏は「ゲノム医療が始まってから、これまでの医療では分からなかった遺伝子の変異が明らかになっています。AI解析サービスの導入が実現すれば、ゲノム医療で得た情報を最大限に生かしきれると感じました」と話す。
がんは正常なDNAが変異を起こしたものだ。孫氏は「どんな変異が起きたかを(遺伝子検査によって)解析すべきだ。検査によって一人一人のがんの特性が分かる」と話した。エスビーテンパスのサービスが始まれば、AIによる医療の進展につながるのは間違いない。
がん遺伝子パネル検査(がんの発生に関わる複数の遺伝子の変化を調べる検査)が保険適用となった2019年6月、日本のゲノム医療時代が幕を開けた。一方で、検査の実施件数は年間およそ2万件とまだまだ少ない。検査データの入力や解析に多大な労力がかかることが大きな要因だ。
「今の日本にもがん遺伝子パネル検査の結果を登録するデータベースはあります。しかし、膨大な情報を入力・集約するのに大変な手間がかかるんです。AI解析サービスによってリアルタイムでデータを集めることができたら、研究のスピードは格段に上がると思います」(佐野氏)
10年ほど前から電子カルテデータの統合プロジェクトを実施している京都大学大学院 医学研究科 腫瘍内科学講座 教授の武藤学氏は、日本でデータを集めることの難しさについて「日本の病院は保守的で、患者さんのデータを外に出すことに消極的なところが多いんです。AI解析サービスを行うにあたって、まずは病院側の意識を変えていかないといけない」と話し「テンパスとSBGのリーダーシップで、みんなのためにやるものだという考え方を広めてほしいです」と続けた。
現在の日本では、がん遺伝子パネル検査の実施タイミングが制限されているという課題もある。武藤氏は、検査のあり方について次のように指摘した。
「もともと、がん遺伝子パネル検査というのは、がんと診断されて、抗がん剤の適用になった時にやるべき検査なんです。しかし、日本の場合は標準治療が終わった後でなければ検査ができない仕様になっている。適切な治療を提供するには、早い段階での検査が必要です。逆にいうと、今の状態は患者さんから適切な治療を受けるタイミングを奪っていることになります。早期に検査を受けられるように、制度の変更を訴えていきたいです」(武藤氏)
検査のタイミングを早めることで、切除できなかったがんが手術で切除できるようになったり、今まで効かなかった抗がん剤が効くようになったりと、標準治療に対してもプラスの影響があるという。武藤氏は「がんとの闘いは、最初に立ち向かうときに良い武器を持つことが重要です。どのようなプロファイルがあるかを知ることで、患者さんの延命治療、最終的にはキュアを目指す治療になることを期待しています」と話す。
一方で、費用面から検査対象を増やすのは難しいという意見も挙がった。
「実はいま、簡単な手術で切除できる早期のがんが増えてきています。その人たちも全て検査対象にするとなると、日本の医療財政を圧迫してしまう。検査を必要としている人が漏れなく受けられるように、基準を見極めるべきだと思います」(佐野氏)
この意見を受けて、孫氏は「佐野先生がおっしゃる通り、簡単に退治できるがんもあるので、そこは臨機応変に対応するべきです。少なくとも、あらゆる治療をやり尽くして初めて検査をするということはあってはならない。『敵を知り己を知れば百戦殆(あやう)からず』。これががん治療の基本になればと思っています」と話した。
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