同じように韓国のヒョンデ(現代自動車)も日本に再上陸を果たしているが、登録台数で見ればBYD以上に苦戦している。ディーラーを置かずオンラインのみで販売していることが、斬新さのアピールにはつながっておらず、販売コストは抑えられるものの消費者との接点を得ることが難しいというジレンマに陥っているようだ。
筆者が試乗したコナは、クオリティーが高いEVという印象を得たが、あえてこのクルマを選ぶという選択肢が浮かばない限りは、成功するのは難しいと思われる。
日本市場で通用するということは、日本車同等の評価を得たことにつながり、それを手柄に新興国でアピールできる。日本市場に並ぶクルマたちのクオリティーの高さ、アフターサービスの充実ぶりを平均水準として利用し、自社製品のイメージを高めようとするのだ。
タイのBYDディーラー。EVのシェア自体は少ないものの、積極的な攻勢で順調に販売台数を伸ばしている。9割と言われる日本車のシェアを奪っていくのか、今後の動向が注目される(写真:piyaphun - stock.adobe.com)日本の自動車市場は、自動車メーカーが鍛錬する場にもなりつつあるのだ。そこで通用すれば世界の市場で通用するといったように、新興国のメーカーも挑戦してくることが今後は増えるかもしれない。
BYDが日本市場で鍛えられることを望んでいるとは思わないが、ここで簡単に撤退するようでは、世界戦略も失敗に終わり、中国国内へ外貨を注ぎ込んで経済を立て直すことにはつながらないだろう。長期戦で考えるまでもなく、販売戦略に限らず本当の意味で、良いクルマ作りが求められるのは当然のことだ。
芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmedia ビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。著書に「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。近著は「きちんと知りたい! 電気自動車用パワーユニットの必須知識」(日刊工業新聞社刊)、「ロードバイクの素材と構造の進化」(グランプリ出版刊)。
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