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北野武も愛用 時計のハイブランド「ジェイコブ」創業者が明かす日本戦略

» 2024年07月28日 08時00分 公開
[河嶌太郎ITmedia]

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 富裕層を魅了するハイブランドの中で、ひときわ高価なのが腕時計だ。高級時計は宝飾と組み合わせて販売することが多いため、その価格帯は数十万円から時には数十億円と、実に1万倍以上の開きがある。

 その高級時計の市場で、創業者がたった1代で、自社をハイブランドまで成長させた企業がある。1986年に米ニューヨークで創業した「ジェイコブ&コー」だ。同社は旧ソ連、ウズベキスタン出身のジェイコブ・アラボ氏によって設立。移民が1代で、まさに「アメリカンドリーム」をつかみ取った形になる。

 創業から15年間は宝飾ブランドとして展開。歌手のマドンナやビヨンセ、サッカー選手のデビッド・ベッカムをはじめ、世界中のセレブリティーを顧客にしていった。カスタム性が高く、独創的でファッション性のある宝飾デザインが話題を呼んだ。2002年、時計事業に参入すると、既存顧客のセレブにも大ヒット。またたく間に高級腕時計としての地位を確立した。

ジェイコブ・アラボ会長(左)と、映画監督の北野武

 日本でも映画監督の北野武が、仏の高級自動車メーカー・ブガッティとコラボしたBUGATTI CHIRON TOURBILLON Titanium & White Ceramic Coating(ブガッティ シロン トゥールビヨン チタン&ホワイトセラミックコーティング)などを愛用している。北野武はジェイコブ&コーの時計の魅力を「今までにないデザインや発想から時計ができていて非常に面白い」と話す。

 「ただの時計というより芸術だよね。ワクワクする。時計の中に一つの世界、物語を作っているというのかな。機能や技術力がすごいだけじゃなく、遊んでいるんだよね。(特にブガッティの時計は)車が大好きだし、暇さえあれば、エンジンのアニメーションを見て遊んでいるから。着け心地も見た目より良い。発想がすごいよ」(北野武)

 現在ジェイコブ&コーが注力するのが日本市場の開拓だ。6月末には、日本の旗艦店「ジェイコブ」銀座店をリニューアルオープン。売り場面積を従来の約2倍の200平方メートルに拡大し、国内に加えてインバウンドで訪れた世界の富裕層に訴求する狙いだ。福岡県にも出店する計画を進めている。

 ジェイコブ&コーは日本市場をどのようにみているのか。セレブを魅了し続ける時計作りに対するこだわりは何か。前編【北野武が愛用する高級時計メーカー「ジェイコブ」 なぜ1代でブランド化できたのか】に引き続き、創業者のジェイコブ・アラボ会長に聞いた。

ジェイコブ&コー創業者のジェイコブ・アラボ会長

人脈を構築する上で大切にしていること

――ジェイコブさんは世界中のセレブと関係を築いています。人脈を構築する上で何を大切にしているのでしょうか。

 毎回新しい知見やトレンドを製品に加えて、顧客を喜ばせること。これを強く意識しています。常に新しいことを取り入れることが大事ですね。

――新製品のアイデアを考えるときに何を一番大事にしていますか。ジェイコブの時計はどうあらねばならないのでしょうか。

 次のアイデアをいつも思い付くように、自分が受けたインスピレーションが何かを考えることにしています。今までに作られたことのないような時計の動きや機構を考えつくよう、常に新しい何かを模索しています。人が見て「面白い」「また見たい」と思うものは何かを考える時間を、大切にしていますね。

――時計作りにおけるインスピレーションの元となるようなものは、何なのでしょうか。

 技術や芸術、建築といったものから毎日インスピレーションを受けています。例えば、起きていきなりアイデアが思い浮かぶこともあります。アイデアを思い付いた時点で、完成形まで見えていることが多いですね。こうしたアイデアを元に時計の開発を進めていくわけですが、実際に実現させるまでには、思い付いてから2〜3年はかけて作っています。

――ジェイコブの時計は、複雑な機構も優れていることに加え、ジュエリーとしても素晴らしい評価を受けています。もともとは宝飾のブランドから始まったわけですが、宝飾においてはどんなところにこだわっているのでしょうか。

 ジュエリーは女性のためのものだと考えています。女性が、今までにない見た目を実現できるかを、常に意識しています。宝飾についてこだわる場所も、蝶ネクタイやグローブといったように、今まで誰もやったことのないようなところに特化しています。ジェイコブはジュエリーからスタートしているので、そこは時計と同様、クリエイション(創造)を止めないように心掛けています。宝飾も自分の情熱の一つですし、時計と同じ考えで臨んでいます。

北野武が愛用している「BUGATTI CHIRON TOURBILLON Titanium & White Ceramic Coating(ブガッティ シロン トゥールビヨン チタン&ホワイトセラミックコーティング)」(Jacob & Co. JAPAN提供)

――ジェイコブ銀座店リニューアルオープンのテープカットでは、北野武さんも駆けつけました。

 実際にお会いして、才能にあふれた素晴らしいアーティストだと感じました。心から尊敬しています。

テープカットに参列したジェイコブ・アラボ会長(左)と、映画監督の北野武(中央)

――銀座店のリニューアルオープンによって、日本のどういった層をターゲットにしていくのでしょうか。インバウンドをどれくらい意識していますか。

 もちろん海外からの観光客の方が、この店を訪れることも意識しています。しかし、一番は日本のユーザーに来てもらいたい思いがあります。「ジェイコブ」を銀座に出店させたのは2022年でした。それまで当社の時計を手に取って見るには、アジア地域では香港やドバイまで足を運ぶ必要がありました。それが日本という世界4位の高級時計市場がある地域で、見られるようになったのです。つまりメインのターゲットは日本の人たちになります。目的は、あくまで現地に住んでいる方々に来てもらえる店を開くことなのです。

――今後、日本でのビジネスをどのように強化していきますか。日本市場をどのように見ているのでしょうか。

 銀座店のリニューアルに伴い、日本での展開を強化していきます。リニューアルを記念する形で、限定デザインの時計も製作中です。日本の腕時計ファンを魅了する製品を、作り続けていきたいと考えています。

――現在、中国では高級時計の需要が急落しています。今後、中国市場に対してどんなスタンスをとっていくのでしょうか。いま注目している海外の市場があれば教えてください。

 中国に限った話ではありませんが、ある特定の国に集中して投資やマーケティングを進めるようなことは全くしていません。世界全体に対して、本当に良い製品を作り上げていこうという一心で、ものづくりを進めています。

――2023年に、ジェイコブ会長の息子のベンジャミン・アラボさんがCEOに就任しました。ジェイコブ会長は今後ブランドがどのように変わっていくと考えていますか。

 私は今までと同じく、創業者兼クリエイティブディレクターとして関わっていきます。ベンジャミンにCEOの座を譲ったことによって、私はその分クリエイティブに時間を費やせるようになりました。ですので基本的にはこれまでと変わらず、よりよい時計作りを進めていきます。

銀座店に展示された時計に見入る北野武

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