生成AIでデジタル戦略はこう変わる AI研究者が語る「一歩先の未来」
【開催期間】2024年7月9日(火)〜7月28日(日)
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【概要】元・東京大学松尾研究室、今井翔太氏が登壇。
生成AIは人類史上最大級の技術革命である。ただし現状、生成AI技術のあまりの発展の速さは、むしろ企業での活用を妨げている感すらある。AI研究者の視点から語る、生成AI×デジタル戦略の未来とは――。
自動車と並ぶ高級製品である時計の市場は現在、世界的に拡大傾向にある。米調査会社Fortune Business Insightsによると、2023年の高級時計の市場規模は481億ドル。これが2024年には536億9000万ドル、2032年には1345億3000万ドルに成長すると予測している。
国内でも時計市場は同様に右肩上がりが続く。矢野経済研究所の調査によると、2022年は8714億円の市場規模が、2023年は1兆30億円まで成長すると予測している。コロナ禍前の2019年の市場規模は8867億円であり、コロナ禍前を超える市場規模を取り戻している格好だ。同研究所によると、この好調の要因には、高級時計の需要増加があり、市場をけん引していると見ている。コロナ禍をきっかけとして国内富裕層を中心に高級時計の需要が増加し、レジャーを控える代わりの消費活動の一環として購入する動きが進んだという。
将来的な売却を前提とした投資対象としても高級腕時計は注目が集まっている。高齢層だけでなく、それまで腕時計に縁がなかった若者世代の富裕層にも広がっているという。こうした時代背景とともに、2022年に日本市場に新規参入した高級時計メーカーが米ニューヨークの「ジェイコブ&コー」だ。
同社は満を持して6月29日、日本の旗艦店「ジェイコブ」銀座店をリニューアルオープンさせた。売り場面積を従来の約2倍、200平方メートルに拡大し、国内やインバウンドで訪れた世界の富裕層に訴求する狙いだ。同社はなぜ1代で、ここまでの成長を遂げられたのだろうか。
ジェイコブ&コーは1986年にジェイコブ・アラボ氏によって設立された。ハイブランドの高級腕時計メーカーとしては後発だ。創業から15年間は宝飾ブランドとして展開。歌手のマドンナやビヨンセ、サッカー選手のデビッド・ベッカムをはじめ、世界中のセレブリティを顧客にしていった。カスタム性が高く、独創的でファッション性のある宝飾デザインが受け入れられたのだという。
ジェイコブ&コーは当初、宝石ブランドとして、その地位を築き上げていった。ジェイコブ・アラボ氏は旧ソ連のウズベキスタン出身で、10代の頃に一家で米国に移住した背景がある。まさに1代で「アメリカンドリーム」をつかみ取った形だ。
時計事業を始めたのは21世紀に入ってからの2002年。ジェイコブ・アラボ氏は米国に移住後、時計職人として修行していた経歴もあり「いつか自分の時計を作りたい」という野心もあったという。宝石商としての地位を築いたのち、顧客のセレブから腕時計製作を打診されたのがきっかけだった。
自らのブランドの高級時計を作る――そんな長年の夢を叶(かな)えるべく、ジェイコブ・アラボ氏は、時計作りのメッカであるスイスのジュネーブに渡り、サプライヤー探しの旅に出る。しかし、そこで待っていたのは「できない」と拒絶されたり、法外な値段をふっかけられたりといった“よそ者への対応”だった。
そこでジェイコブ・アラボ氏は、複雑な機構を持たないものの、持ち前の宝飾を生かしたユニークな時計の製作に着手する。それで2002年に誕生したのが「ファイブタイムゾーン」という時計だ。これには5つの地域の時刻が、盤上で一度に確認できる特徴がある。プライベートジェットで世界を飛び回るセレブのライフスタイルに着想を得たという。
ファイブタイムゾーンの定価は当時、約60万円以上に価格を設定していたものの、同社の主な顧客層だったセレブ客層を中心に大ヒットする。さらにセレブたちが、今でいうインフルエンサーのような役割を果たす形で、より幅広い客層にも広まっていった。
こうした高級腕時計ブランドとして誕生したジェイコブ&コーは、そのブランド展開に、それまで宝飾事業によって培ったセレブ人脈を惜しみなく投入する。ファイブタイムゾーン展開の際にも、世界的モデルのナオミ・キャンベルを起用。こうして同社は時計メーカーとしての名声やブランドも獲得していき、数年後には一度拒絶されたスイス・ジュネーブの時計職人たちをサプライヤーに入れることに成功した。
このようなセレブを積極活用したプロモーションは、ジェイコブ&コーの強みでもある。サッカー選手のリオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウド、プロボクシング元世界5階級制覇王者のフロイド・メイウェザーが愛用する時計としても著名だ。2010年代に入りSNSが普及してからは、SNSによるプロモーションも積極的に展開。ジェイコブ&コーのインスタは540万フォロワー、アラボ氏個人でも260万フォロワーを超えている。
その後ジェイコブ&コーは、歴史の浅い腕時計ブランドとして、それまで他の時計ブランドではやらなかったことへの挑戦にこだわり続けた。もともと宝飾メーカーとして追求してきた、セレブに愛されるような“唯一無二”のものづくりを、腕時計においても継承した。そのためジェイコブ&コーは、セレブも憧れるような“超”高級化路線を展開する。現在、同社が展開する腕時計の価格は、平均で5000万円前後だという。
他の時計メーカーにはないオンリーワンを志向するため、見た目も機能も奇抜なものが少なくないのがジェイコブ&コーの特徴だ。
例えば2020年に発売した「ジェイコブ×ブガッティ シロン トゥールビヨン」は、1台4億円以上する超高級スポーツカー「ブガッティ シロン」をモチーフにデザインした。フランスの高級自動車メーカー・ブガッティとコラボした製品で、W16エンジンの機構を、時計のゼンマイ駆動で再現。時計の方の価格は5000万円以上で、日本では映画監督の北野武が愛用している。
2022年に発売した「オペラ ゴッドファーザー 50周年記念モデル」は、オルゴールの円筒形のミュージックボックスの機構を、腕時計内に再現している。1972年に公開された映画『ゴッドファーザー』50周年を記念して製作した時計で、値段は9680万円だ(通常モデルでも6000〜7000万円)。オルゴールのゼンマイを巻くと、実際にゴッドファーザーのテーマ音楽が流れる。
こうした腕時計はあくまで時計の複雑な機構で魅せる設計になっており、時計自体に宝飾はあまり乗っていない。高級腕時計ファンからは「思いつきのとっぴな機構を実現できてしまう技術力の高さがジェイコブ&コーの強み」と評する声もある。
一方で、35億円の時計「ビリオネア タイムレストレジャー」は、こうした複雑な機構に加え、216.89カラットの希少なイエローダイヤモンドを使用している。「宝石の調達だけで3年半の歳月をかけた」といい、宝石ブランドとしての強みも生かした製品だ。この時計は「世界一高価な時計」だとうたう。ホワイトダイヤモンドのバージョンはフロイド・メイウェザーが愛用している。
6月29日に開かれた旗艦店のオープニングイベントでは、創業者で会長のジェイコブ・アラボ氏、映画監督の北野武もテープカットに参列した。北野武はジェイコブ&コーの腕時計のファンで、結果的に同社の日本向け展開での広告塔のような役割も果たしている。映画『首』がカンヌ国際映画祭で公式上映された際や、テレビ朝日「ビートたけしのTVタックル」などでも着用していた。北野武に、同社の時計に惹かれる理由を聞いた。
「今までにないデザインや発想から時計ができていて、とても面白い。ただの時計というより芸術だよね。ワクワクする。時計の中に一つの世界、物語を作っているというのかな。機能とか技術力がすごいだけじゃなく、遊んでいるんだよね。(特にブガッティの時計は)車が大好きだし、暇さえあれば、エンジンのアニメーションを見て遊んでいるから。見た目より着け心地も良い。発想がすごいよ」
ジェイコブ・アラボ会長に、世界のセレブと関係構築する秘訣を聞くと「毎回新しい知見やトレンドを製品に加えることで、セレブをはじめとする顧客を喜ばせることを強く意識している」という。唯一無二の存在であるセレブに負けないくらいの「オンリーワンな製品」を絶えず提供することによって、顧客を魅了し続ける狙いがありそうだ。ジェイコブ・アラボ氏は日本市場への展開も強化していくという。
「銀座店のリニューアルに伴い、日本での展開を強化していきます。日本は高級時計で世界4位の市場があり、既にリニューアルを記念する限定デザインの時計を製作中です。日本の腕時計ファンを魅力する製品を作り続けていきます」
ジェイコブ&コーは福岡での出店も計画しているという。国内外で伸び続ける高級時計市場。著名人を活用する戦略を取ることによって、どこまで存在感を示せるのか。時計としては22年目の“新興ブランド”の挑戦に注目だ。
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元・東京大学松尾研究室のAI研究者、今井翔太氏が「ITmedia デジタル戦略EXPO 2024 夏」に登壇。
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