うほっ、健康家電「ゴリラのひとつかみ」が人気 おもしろネーミングは「失敗のサンプル」から生まれた週末に「へえ」な話(3/4 ページ)

» 2024年07月28日 07時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

商談の席で「面白い!」と言ってくれた

 次に、ネーミングである。ものすごくチカラが強いことが伝わる言葉を探していたところ、水島さんの頭の中で「ゴリラ」が浮かんだそうだ。

 調べたところ、ゴリラの握力は400〜500キロほど。成人男性の握力は平均40キロほどなので、その10倍である。当初「ゴリラのわしづかみ」も浮かんだそうだが、それだと足がつぶれてしまう。消費者に恐怖感を与えてはいけないので、「ひとつかみ」を候補のひとつにした。

 会社のネーミング会議で、水島さんは5つほどの案を発表した。10人ほどが参加している中で、「大根足〇〇」「ハイパワー〇〇」などと読み上げて、最後に「ゴリラのひとつかみ」と語ったところ、1〜2人が笑ってくれた。たくさんの人が笑ってくれなくても、ササる人にはササる。この商品はそうしたネーミングのほうがいいのではないかと受け止め、「これでいける!」と確信したそうだ。

 商品のコンセプトとネーミングが決まったものの、社内では「どう売っていけばいいのか」という課題にぶちあたっていた。サイズを短くしたことによって、見た目が「血圧計」のようになってしまった。しかも、商品名は「ゴリラ」である。これまで扱ったことがない商品だったので、会社の上層部も“よく分からなかった”のである。

 そして、出てきた回答は「営業担当と同行して、商品化できるだけの契約を取ってこい」である。言葉にすると、“体育会系”の雰囲気が漂ってくるが、結果はどうだったのか。

 「自社の商品を3〜4種類ほど持っていって、それぞれを紹介したんですよね。どれも『ふむふむ』といった反応でしたが、『ゴリラのひとつかみ』のときは『面白い!』と言ってくれました。中には『自社のPB(プライベートブランド)として売りたい』という声もいただきました」(水島さん)と振り返る。商談の席で「200〜300個」の契約があれば……と思っていたそうだが、いきなり10倍の数字を提示されたのだ。

 2月に発売したところ、SNSで話題に。「スゴいネーミング、これは効きそう」「商品名が秀逸すぎる。ゴリラにひとつまみされたい」といった具合に、当初はやはりネーミングで盛り上がった。ネット上の盛り上がりはリアルにも波及して、その後の売れ行きは、冒頭で紹介したように計画を大きく上回った。

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