その理由は、オーバーツーリズムが問題にならなかったからです。しかし、ここまで訪日客が増えたことで、何らかの対策をしなければ一般市民の日常生活や店舗の通常営業に支障が出るようになってしまいました。
例えば京都市の調査は、市民は観光の重要性は認識しつつも、道路の渋滞や観光客のマナー違反といった迷惑を被っていることを指摘しています。
渋谷にある海鮮バイキングの店では、平日ディナーの価格について、通常女性客が7678円、日本人女性および在日外国人女性であれば6578円で提供しており、二重価格を本格的に導入している店として話題になっています。
ここでのポイントは、訪日客に提供する価格が「通常価格」であり、日本人と在日外国人の価格が「割引価格」である点です。つまり訪日客向けに高い価格を設定しているのではなく、日本に居住している人に対して利用しやすいように値引いて設定しているのです。
訪日客向けの二重価格は、どうしても「訪日客向けに高く販売する」というイメージを持ちやすいのですが、このようにすれば、価格設定に納得しやすくなるでしょう。これが、国内居住者向けが通常価格、訪日客には割高な価格設定だとしたら、何となく「ぼったくっている」とか、「おもてなしの国なのにせこい」というイメージにつながりかねません。二重価格設定の際には、この点を押さえるのが重要です。
飲食店にとどまらず、例えば姫路城でも二重価格を検討しているというニュースがありました。姫路城は世界文化遺産であり、年間来場者のうち外国人観光客が占める割合も多い人気スポットです。
施設を維持していくためには多額の費用がかかります。姫路城の場合、年間10億円以上がかかっているそうです。そのための資材の確保、職人の技術を継承する人材育成など、さまざまな投資が必要であり、現状の価格設定ではまかないきれないということで、姫路市長は二重価格も検討しているといいます。
具体的には、外国人が30ドル(4600円)程度、姫路市民が5ドル(600円)程度の方向で検討しているそうです。価格差が大きいこともあって非常に話題になりましたが、これをきっかけに他の自治体や城でも二重価格設定についての論議が活発になってきています。
そもそも、観光地での二重価格は海外でよく見かける取り組みです。筆者が先日訪れたドイツでも、人気スポットの一つであるノイシュバンシュタイン城の内部見学ツアーでは、通常価格以外に11種類の優待対象者がいて驚きました。基本的には、ドイツ国民を優遇する制度でした(ちなみに、周辺を歩くだけなら無料)。
こうした施設では、いずれもが自国民や地元民と観光客との価格差が2〜20倍ほどと幅があります。姫路城の想定している6倍程度はある意味、妥当な価格差かもしれません。
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