リテール大革命

ドンキ、爆発的成長の裏に「まじめにふまじめ」 AI活用、商品開発、顧客重視の社風を読み解く(1/3 ページ)

» 2024年07月31日 05時00分 公開
[佐久間 俊一ITmedia]

著者プロフィール

佐久間俊一(さくま しゅんいち)

レノン株式会社 代表取締役 CEO

城北宣広株式会社(広告業)社外取締役

著書に「小売業DX成功と失敗」(同文館出版)などがある。

グローバル総合コンサルファームであるKPMGコンサルティングにて小売企業を担当するセクターのディレクターとして大手小売企業の制度改革、マーケティングシステム構築などDX領域のコンサルティングを多数経験。世界三大戦略コンサルファームとも言われている、ベイン・アンド・カンパニーにおいて2020年より小売業・消費財メーカー担当メンバーとして大手小売企業の戦略構築支援及びコロナ後の市場総括を手掛ける。2021年より上場会社インサイト(広告業)のCMO(Chief Marketing Officer)執行役員に就任。

2022年3月小売業と消費財メーカーの戦略とテクノロジーを専門にコンサルティングするレノン株式会社を設立。

2019年より1年半に渡って日経流通新聞にコーナーを持ち連載を担当するなど小売業には約20年間携わってきたことで高い専門性を有する。

日経MJフォーラム、KPMGフォーラムなど講演実績は累計100回以上。


 ドン・キホーテは今や、知らない人がいないほど日本中の人たちに利用されるチェーンとなりました。同チェーンを運営するのが、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)です。

 利用者としてしかドン・キホーテを知らない人は「にぎやかで楽しく、ありとあらゆる物がそろっているお店」という印象があるかもしれません。しかし、同社の経営は大胆な戦略と緻密(ちみつ)な数値に裏付けされています。

「にぎやかで楽しい」だけではない、ドンキの戦略(出所:ゲッティイメージズ)

 そして、その精度の高い戦略と数値設計に加えて、斬新なアイデアや他の企業がためらうような強く、ストレートなメッセージ性を備えているのが特徴です。さらに詳細に見ていくと、小売業のマーケティングにおける普遍的な重要要素である「顧客視点」のヒントも潜んでいます。

 例えば、同社の企業原理には「顧客最優先主義」と書かれています。この顧客最優先主義を原理原則とした上で成り立つ戦略の成果が、次のような数値に表れています。

データで見る、PPIH

 2014年からの10年で売り上げは3倍、営業利益は4.2倍、時価総額にいたっては5.7倍です。さらに店舗数が2.5倍、購買客数は2.5倍、アプリ会員も3倍と驚異的な数字を達成しています。成長はまだとどまるところを知らず、2030年に向けては、現状の2倍近い営業利益目標を掲げているのも驚きです。

 今回は、他の小売業も参考にすることが多い、PPIHの象徴的な取り組みをいくつかピックアップしたいと思います。

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