隙間時間に数時間など、短い時間だけ働いて収入が得られるスポットワーク。「新しい働き方」としてネットでは好意的な声が見られます。橋本環奈さん出演のCMでおなじみのタイミーが7月、東証グロース市場に上場したことも話題になりました。
他にもLINEスキマニやシェアフル、メルカリハロ、ご近所ワークなど異なる特徴を持った事業者がスポットワークに多数参入し、2024年秋にはリクルートがタウンワークスキマ(仮称)を提供開始すると発表しています。
配達サービスが人々の生活に浸透し「Uber Eats」と書かれたデリバリーバッグが街中で見なれた光景になるほど、スポットワークは身近な働き方として定着しつつあります。しかしながら、かつて「ワーキングプアの温床」などと激しい非難を受けた“日雇い派遣”は、2012年施行の改正労働者派遣法によって原則禁止とされました。
サービスとして共通点が多いスポットワークは、これから日雇い派遣と同様に規制強化の対象となっていくのか。それともこのまま、拡大の一途をたどっていくのでしょうか。
ワークスタイル研究家。1973年三重県津市出身。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関『しゅふJOB総研』所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ約50000人の声を調査したレポートは300本を超える。NHK「あさイチ」他メディア出演多数。
現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構 非常勤監査役の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。
スポットワークの利用者が広がっている背景はさまざまですが、中でも大きな理由として4点挙げたいと思います。まず、働き手と職場双方から旺盛なニーズがあることです。時間に空きができた時、無為に過ごすより少しでも収入を得たいと考える人はたくさんいます。
厚生労働省が発表した6月分の毎月勤労統計調査(速報)によると、実質賃金は27カ月ぶりに上昇へと転じましたが、ここ数年、物価高が続いて家計が圧迫されてきただけに、スキマ時間を使ったプチ稼ぎの魅力は増しています。
一方、会社や店舗などでは慢性的な人手不足です。コロナ禍で人員削減した反動もあり、特に飲食店や接客業などでは「猫の手も借りたい」と悲鳴を上げる職場が少なくありません。また、働き方改革が進められていることで、業務の合理化に取り組む職場も増えています。
例えば、不動産会社が遠隔地にある空き家の状況を確認する場合。近隣のスポットワーカーに写真を撮って送ってもらえば、正社員が現地まで出向いていた時間を他の業務に充てたり、浮いた時間分の残業を削減したりすることができます。
次に、テクノロジーの発展によってスマートフォン一つあれば簡単にスポットワークを利用できるようになったことが挙げられます。空き時間にサッと仕事に入りたい働き手にとっては、とても便利です。専用アプリを立ち上げると、近隣ですぐ勤務開始できる仕事がリアルタイムで表示されます。希望に合う求人が見つかれば、そのまま申し込みもできます。
3点目は、ルールが整備されたことです。労働基準法の改正によって2019年から労働条件の明示が書面だけではなく、電子メールやSNSでも可能になりました。また、グレーゾーン解消制度によって、スポットワーク事業者が賃金の支払いを代行しても違法ではないこと、貸金業にはあたらないことなどが確認されました。
最後に、副業に対する抵抗感がなくなってきていることです。ほんの数年の間に、社員の副業を認める会社が一気に増えました。かねて副業したかった働き手は多く、職場もそれを認めるようになってきたことで、本業を持つ人がスポットワークで副業するケースは珍しくなくなっています。
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