多くのフィンテック企業が、詐欺防止のために人工知能(AI)の活用を模索している。生成AIでコストを削減し、決済プロセスをより迅速かつ効率的にしようと試みる。
決済業界の大手企業であるFiserv、Visa、Global Paymentsは、すでにAIを導入している、もしくは導入を計画していると述べている。マッキンゼーで銀行業務と決済に特化したパートナーであるSid Tiwari氏は、もう1つの重要な応用分野として「詐欺防止」が挙げられると指摘する。
Sid Tiwari氏によれば、生成AIは大規模なデータを使って学習し、その中から特定のパターンを見つけ出すことができるという。例えば、銀行口座で異常な活動が見られた際、大規模な引き出しが続いた際に、AIプログラムがそれを不正の可能性があるとしてフラグを立てることができるのだ。
Sid Tiwari氏は、生成AIの潜在的な応用分野や、この新興技術の具体的な使用例についてPayments Diveに語った。
機械学習は以前から詐欺検出に使用されてきた。現在は、より高度なAIモデルが利用しやすくなり、幅広く適用できるようになっている。
例えば、決済の開始時点でエラーがないかを確認したり、決済処理の指示を作成したり、レポート作成や照合にもAIを活用することが可能である。以前は特定の用途に限られていたものが、今ではあらゆる場面で適用可能になった。
長年業界に携わってきた私から見ると、かつてはAIモデルの開発に数カ月を要していた。モデルを構築してから適用するまでが大変であったが、今ではデータをモデルに投入し、例えば「頻繁に取引が行われる場合、それを不正としてフラグを立てる」と指示するだけで、すぐに不正を分類できるようになった。
開発にかかる時間が大幅に短縮され、AI機能の実装も容易になっている。また、AIを広範囲に適用することで決済詐欺が減少し、決済コストを削減できる可能性が高まっている。
決済詐欺のパターンを示すデータが必要である。例えば、実際の決済環境を模倣したデータセットを作成し、それを使ってAIモデルをテストする。このAIモデルは、あたかも詐欺を働こうとする人物のように振る舞い、さまざまな不正行為のシナリオをシミュレートできる。このようにしてAIは、どんな不正が起こり得るのかを迅速に学習し、その結果、すぐに実際の不正防止策に役立てられるのだ。
安全対策としては、3つの重要なポイントがある。第1に、「人間が関与するプロセス」が必要である。AIアルゴリズムが単独で動作することは避け、プロセスをチェックする人間が必要である。
第2に、アルゴリズムによる相互作用の生成方法がある。例えば、「100ドル以上で特定の商品に関連しない取引は不正と見なす」とモデルに指示できる。最後に、定期的な監査を行い、システムが期待通りに機能しているかを確認することが求められる。
特定のタスクを実行するモデルの構築に大きな投資が行われている。例えば、自動的に請求書を処理するモデルが訓練されている。生成AIは以前はQ&Aボットとして始まったが、現在では意思決定プロセスに組み込まれ、私たちが意思決定を行う際に役立つ情報を提供するように進化している。
ある日は取引が少ないのに、その翌日にはクリスマスのように取引が急増することがある。AIは、こうした取引量の変動をシミュレーションして学習することで、将来的に、決済企業がどのような状況でも効率よく運営できるように支援する。例えば、急な取引量の増加に備えてシステムを最適化したり、リソースを適切に配分したりすることが可能になる。
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