アクセンチュアが金庫番型のCFOからの脱却を提唱しはじめたのは2017年。この潮流は国内企業においても徐々に進行しているものの、その後のレベル感には差が生じていると、山路氏は話す。
金庫番型CFOからの脱却のためにまず目指すべきは、FP&Aを従え、各事業のパフォーマンスを掌握できる段階だ。この次に、全社プロジェクトの変革を担う段階がある。さらに進んでいる企業は、部門横断的に実行する全社変革プロジェクトを率い、価値創出をマネジメントする段階にある。
こうしたCFOの役割の高度化を目指す上で、日本企業においてはどのようなことが支障になっているのか。グローバル企業との比較で、3つの課題が見えてくる。
まず、日本企業は高品質データを求める姿勢があまり見られない。全社変革プロジェクトで価値創出する上で、高品質データの不足は障壁となると考えるグローバル企業は30%に対し、日本企業は16%にとどまる。
日本企業のこうした高品質データへの感度の低さは、全社変革において定量的な価値を掲げられている割合の低さにつながっていると山路氏は指摘する。定量的な価値を掲げているグローバル企業は40%に対し、日本企業は26%だ。
さらに、CFOと事業責任者が事前に(プロジェクトがもたらす)価値の合意をできている割合も、日本企業とグローバル企業で開きがある。
「質の高いデータをCFOが強引に集められるような状況になっていないと、 プロジェクトの定量的な価値を測定することは難しい。すると『こんな価値があるのだから、これくらい投資する』と示して引っ張っていくことも難しくなる、という連鎖が起きてしまっているのではないか」(山路氏)
こうした課題を踏まえ、同社は日本企業が取り組むべきことは4つあると提言する。
まずは、CFOが全社変革を率いていく上で何よりの武器になるデータが「報告させずに手に入る」ような仕組みづくりだ。事業側の手間を借りずとも、データを掌握できる状態を構築する。データを入手したら、次に取り組むべきは改革がもたらす価値の定量化だ。そうして指標を明確にした上で、プロジェクトを財務効果の面から効果測定するチームを立ち上げてプロジェクトに派遣し、内側からの推進力に組み込む。
上記3つの取り組みを実現させるために必要なのが、CFO傘下の経理・財務部門の人材にビジネスの最前線の経験も積んでもらえるような育成モデルの作成だ。従来のバックオフィス業務の経験しかない状況では、こうしたプロジェクトへの貢献は実現しづらい。
これらの取り組みを実践している事例として、同社は製造業B社の事例を挙げる。B社では、商品の開発進捗や、顧客の製品に自社製品を組み込めているのかなど、さまざまな職種の進捗状況をダッシュボード化している。情報が入力されないと業務が進まない仕様としており、ダッシュボードの数字集計は自動化している。
「重要な取り組みが進んでいるのかどうかをデータ化し、サマライズする。これが事業の中に閉じずに、本社のCxOがいつでも自由に見られる仕組みを作るのが、効果創出支援チームの役割になる」(山路氏)
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