DX、サステナビリティ、人的資本向上──企業がさまざまな側面において変革を迫られる中、CFOやその参加の財務経理部門も、その役割を大きく変化させる必要があるようだ。
CFOはもはや“金庫番”ではなく、また財務部門のリーダーとして数字を取りまとめるのでは不十分だと、アクセンチュアで企業価値向上のためのビジネスコンサルティングを担当する山路篤氏(ビジネス コンサルティング本部 Enterprise Value マネジメントプラクティス 日本統括 マネジング・ディレクター)は話す。同社が実施した調査では、CFOに新たな役割が求められることが浮き彫りになった。どのような変化なのか。
調査は売り上げ10億ドル規模以上のグローバル企業における、財務リーダー1420人を対象に2023年6〜8月に実施。デジタル化をはじめとして、企業の事業環境における変化は常態化している。これを前提に、CFOにはどのような役割の変化があるのか探ることを目的とした。
全社変革のために進めているプロジェクトの状況を聞いたところ、取り組み中のプロジェクトテーマは1社当たり平均3.1件、1年以内に着手予定のプロジェクトテーマは2.1件だった。「変革しないといけないアジェンダは目白押しであり、必要性に迫られている状況が見て取れる」と山路氏は話す。
そうしたプロジェクトを、CFOが主導しているケースはどれほどあるのか。2件以上のプロジェクトをCFOが主導している割合は、過去2年間は11%、今後2年間は34%。企業が変革を余儀なくされる中、今後CFOにはこの役割を担うことが期待される。
カギとなるのは、IT部門や財務経理部門といった、CFOが従来管掌してきた部門だけでなく、ビジネスにおけるフロント部門にもまたがるプロジェクトをリードできるかだ。日本企業においてCFOは「財務経理部門のリーダー」であると見なされがちだが、本来はCEOと並び、全社の業績に横断的に責任を持つ立場だ。部門に閉じず、全社的な成果を創出する能力が求められる。
例えばグローバル食品メーカーのA社では、CFOは全社的なプロジェクトを主導することはもちろん、その他のプロジェクトにもCFO傘下の財務経理部門の人材からなる「効果創出支援チーム」を派遣している。
一般に大掛かりなプロジェクトを行う際、見込まれる効果の算出方法などはプロジェクトチームに任される。するとあいまいな目標を定めてしまったり、適切な効果測定ができなかったりということが起きる。
このため同社では、効果創出支援チームがプロジェクトごとに送り込まれ、期待効果の算出式の定義や、どれほどの財務効果を見込めるかの算出を担う。指標の策定とモニタリングの役割を果たし、また成果創出のためにプロジェクトオーナーとしての立場でも関わる。
一方で同社には、FP&Aチームも存在する。効果創出支援チームは全社変革プロジェクトごとに組成、派遣されるのに対し、FP&Aチームは事業に派遣され、実績や予測の分析、課題の抽出などを通じて事業価値や業績の向上をサポートする。CFO傘下の2つのチームが、それぞれプロジェクトや事業の現場に入っていく形で関わる。
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