メルカリは、日本発のフリマアプリとして国内外で急速に成長してきた。個人間で中古品を売買するオンラインプラットフォームを提供することで、特にスマートフォンユーザーに広く支持されている。
メルカリの収益源は、取引手数料や広告収入、企業向けサービス提供など多岐にわたるが、収益の柱はフリマアプリの取引手数料である。また、フィンテック文脈のメルペイや、スポットワーク文脈のメルカリ ハロといった新規事業も注目されるが、これらはまだ収益化の途上であるといえよう。
一方で、同社の肝いりであった米国事業の進展が遅れ気味であることが投資家の不安を誘った。株価は2021年の7000円でピークをつけて以来低迷しており、現在は2270円と3分の1以下で推移している。
こうした状況下で、メルカリは2021年に発行した満期の異なる2種のユーロ円建て転換社債型新株予約権付社債について、合計で250億円を上限に買い入れることを発表した。購入した社債は消却する方針であるという。一般にはなじみのない施策だが、どのような背景があるのだろうか。
そもそも転換社債型新株予約権付社債とは、社債としての特性を持ちながら、一定の条件下で株式に転換できるオプションが付与された金融商品である。
投資家は株価が一定の条件を満たした際に株式に転換することで、キャピタルゲインを得る可能性がある。その代わりに、利回りは通常の社債より低く設定されるか、利回りのないゼロクーポン債として発行されるため発行体の企業としては利息負担を抑えられる。
投資家にとっては、リスクが抑制された「債券」という金融商品のカテゴリーにありながら、株価の上昇時には株式が付与され、アップサイドリターンも期待できるという点で投資妙味を感じるメリットがある。
しかし、現在株価が転換価格を常に下回っており、目先で大きく値上がりする可能性も乏しい場合、株式転換というオプションの価値は実質的にゼロに近づくという点がデメリットだ。こうなると利回りがないか、相当低いただの債券を保有しているのと変わらない。
そうした状況下では、投資家は社債を保有し続けたとしても利回りが低い。額面価格よりも安い値段で“損切り”してでも、他の投資手段に乗り換えたいと考える投資家も出てくるだろう。
そしてもう一つのデメリットが、転換社債の発行により潜在的な株式の希薄化リスクが増大し、既存株主にとっては自身の持ち株が希薄化するというものだ。株の買いを躊躇(ちゅうちょ)させてしまうという副作用もある。
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