では、そんな「飢えるニッポン」を避けるためにわれわれはどうすべきか。注目されているのが「食料安全保障」だ。
当たり前の話だが、国家というものは国民を決して飢えさせてはいけない。だから基本的には戦争や天変地異が起きたときに備えて、自国内の食料自給率を高めておくものだ。
といっても無計画にたくさん生産させてしまうと、過剰供給で価格が暴落し、農家や畜産家が廃業に追い込まれる。そこでとりあえずたくさん生産させた食料を国内に流通させるだけではなく、他国にも売りつける。つまり、「自由貿易」にもっていく。
もし何かしらの「有事」が起きたときは、輸出をストップして国内市場にまわす。そこで再び生産が戻ってきたら今度は過剰供給しないようにそれを輸出に当てる。もちろん、海外の顧客に迷惑をかけてしまうわけだが、やはり自国民を飢えさせないことを優先する考え方で、「輸出」を国内需給の調整弁にしているというわけだ。
米国やオーストラリアの牛肉が分かりやすいが、米ということではやはりインドだろう。
農業国として知られるインドの食料自給率は100%。しかし約14億の人口を擁するだけあって、いつ「有事」で食料が不足するかも分からない。そこで「減反」とか愚かなことはせず、せっせと米を生産して海外に輸出している。現在、インドは年間1000万〜2000万トンを輸出して、世界に流通する米の約4割を占めている。もし何か「有事」が起きたとき、この1000万トンを引き上げれば14億の国民が飢えずに済むというワケだ。
実際、2023年7月にはインド国内の供給確保などを優先するために米の輸出禁止を決め、世界の食料価格にも大きな影響を与えた。
では、このように世界各国が着々と食料安全保障に力を入れる中で、われらが日本の米は果たしてどれくらい輸出をしているのか。農林水産省の資料によれば、2023年は3万7186トンだ。同年の主食用米の収穫量は約661万トンなので、その0.6%しか輸出していない。食料自給率38%のこの国では「焼石に水」というレベルだ。
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