小田急「ロマンスカー新型車両」が登場へ これまでの“常識”を飛び越えられるか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/5 ページ)

» 2024年09月14日 09時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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“仮称”80000形への期待

 2018年にオレンジ色のロマンスカー70000形「GSE」が誕生し、展望席付きロマンスカーは「VSE」と合わせて4編成になった。ところが「VSE」は2023年に引退したため、現在の展望席付きロマンスカーは「GSE」の2編成のみとなった。いまや箱根特急のほとんどが「EXE」になってしまった。ロマンスカーのアイデンティティーの喪失だ。編成数維持の面からも、2028年に登場する新型ロマンスカーは展望席必須といえる。

 しかし、“50000形「EXE」の代替”という言葉も気になる。「EXE」の特徴は編成分割だ。展望席付き編成分割対応の姿は、地下鉄対応で編成分割可能なロマンスカー60000形「MSE」の先頭車を展望席付きにするイメージだろうか。いまや「MSE」も5編成あり、箱根行き特急にも使われている。その便利さを引き継ぐ必要はあるだろうか。

 おそらく「80000形」という形式名が与えられる新型ロマンスカーの役割は、再び失われそうなロマンスカーの魅力回復にある。展望席は必須だけれども、それが先頭車になるか、あるいは20000形「RSE」のような2階建て車両になるか。2階建てなら分割編成にも対応できる。

 あるいは東武鉄道の「スペーシアX」のような個室中心の豪華タイプになるかもしれない。東京近郊観光地として、箱根と日光はライバルだ。東武鉄道は編成分割対応の「リバティ」と非分割個室付き「スペーシア」「スペーシアX」の2系統で運用していて、これは小田急電鉄の「EXE」と「GSE」の関係に似ている。

 80000形(仮称)は、箱根の魅力を最大限に引き出すために「ロマンスカーX」になる必要がある。いままでのロマンスカーの「常識」を飛び越えてほしい。

20000形「RSE」は、JR御殿場線に乗り入れる専用車として製造された。先頭車は座席を高くすることで展望席とし、中間には2階建て車両を連結。異色のロマンスカーだった(ロマンスカーミュージアム報道公開にて筆者撮影)

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてパソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICETHREETREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


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