「若者のディズニー離れは“料金が高い”から」説は、本当かスピン経済の歩き方(6/7 ページ)

» 2024年09月18日 07時30分 公開
[窪田順生ITmedia]

チケット安売りの見返り

 テーマパークを運営するためのコストはもちろん、リピーターのためにも常に新しい魅力を開発しなくてはいけないので設備投資も必要だ。

 では、「安いチケット」でそのカネをどう捻出するのか。人口が右肩上がりで増えていた時代は、日本名物の「薄利多売」で乗り切れた。園内を通勤ラッシュのように混雑させる代わりに、安く高品質なエンタメを提供できた。

 しかし、今は無理だ。先ほどの人口ピラミットを見ても分かるように、ここから若者と子どもが加速度的に減っていく。となると、チケット安売りであの巨大パークを運営する方法は一つしかない。「ブラック労働」だ。

 時給は最低賃金ギリギリに抑えて、これまで3人でやっていた仕事を1人でやらせる。「お客さまのため」とかなんとかうまく丸め込んで、できるだけタイムカードを打たない「サービス残業」を増やす。

「ファンタジースプリングス」開業時に行われたオープニングセレモニーの様子 (c)Disney

 「誰もが楽しめる安くて安全で高品質なディズニー」を実現するには人身御供(ひとみごくう:人間を神への生贄とすること)ではないが、必ず犠牲になる人々がいる。

 これが日本人を貧しくさせた「元凶」だ。

 低賃金労働者が「われわれのような貧しい者でも買えるようにしろ」と企業に「安さ」を過剰に求めることによって、新たな低賃金労働者が生み出される。この貧しい者同士の足の引っ張り合いを30年以上続けてきた結果が今の「安いニッポン」なのだ。

 分かりやすく言えば、日本人は「もっと安く! もっとお得に!」と叫びながら「みんな等しく貧しくなる」という道を選んだのだ。

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