ここまでサントリーが日本ワインで行っているさまざまな取り組みに触れてきたが、どんな内容でも社会に発信しないことにはもったいない。その点、登美の丘ワイナリーはイベントやツアーの開催、国際コンクールへの出品に取り組むほか、今後は輸出にも乗り出す方針だ。
サントリーの常務執行役員でワイン本部長の吉雄敬子氏は「海外での日本ワインの知名度はまだ高くないが、国内では高価格帯でも売れるなど、ある程度の成果は出ています。高くても納得して買っていただけるストーリー付けや、世界で日本酒に続くような市場を作っていきたいです」と意気込む。
飲食店需要がコロナ前から復活しきれていない中、サントリーによると1〜8月のワイン市場全般は前年同期比で98%と、何とか横ばいを維持している。そのうち吉雄氏の話にあった通り、5000円以上するような高価格帯の商品が顕著に伸びている。品質が価格に結び付くワイン市場では好材料だ。
また、同価格帯のワインと比較したときに日本ワインは20〜30代の購入が多い傾向にあるという。若年層のアルコール離れが話題になることも多いながら、そう安価ではない日本ワインでこうした層をキャッチできている背景には、前回と今回で触れた取り組みの影響もあるだろう。価格に納得できるようなストーリー付け、さらに環境を意識した取り組みは「共感」や「エシカル」といった、若年層の消費動向にマッチしている。
好調とはいえ、まだ赤字の日本ワイン事業。今回紹介したような取り組みがサントリーにもたらす果実は、果たして酸いか、甘いか。
フリーライター・編集者。熱狂的カープファン。ビジネス系書籍編集、健保組合事務職、ビジネス系ウェブメディア副編集長を経て独立。飲食系から働き方、エンタープライズITまでビジネス全般にわたる幅広い領域の取材経験がある。
Xアカウント→@kitoyudacp
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