人的作業ほぼゼロに 「紙ベース」の職場を大変革するOCRとは?不動産DXのいまを知る(2/2 ページ)

» 2024年10月08日 07時00分 公開
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OCRで220時間超の業務効率化を実現

 OCRを利用した業務効率化はアットホームでも行っています。

 アットホームでは、顧客である不動産会社や消費者向けに発信している会社紹介パンフレットやサービス提案資料、プロモーション関連資料を日々制作しており、それら約800点を社内サイトで公開・提供しています。電話番号が変更になったなど複数の制作物にまたがる大きな修正が発生した場合、社内サイトで公開している資料全てに該当部分がないかどうか目視でチェックしており、これまでは社員2人が半日かけて確認していたため、かなりの時間と手間がかかっていました。

 この作業を効率化するため、導入したのがOCRを活用した検索システムです。PDFファイルを画像化し画像からOCRを用いてテキストを認識、作成したテキストリスト情報をキーワード検索できるようにし、どのファイルにキーワードが含まれるかを探知しています。2023年11月からシステムを稼働させ、累計で224時間の削減を実現しました。業務に合わせて担当者が使いやすいシステムにするため、自社でシステムを構築しています。

OCRを活用した検索システムを導入し、累計で224時間の削減を実現

 さらに、OCRは活用していないものの、大幅な業務効率化に取り組んでいる類似の事例を紹介します。

 アットホームでは、不動産会社や消費者向けの資料を日々制作しており、現在では約12万件ものIllustratorデータ(aiデータ)を保存しています。

 例えば、サービスの仕様や料金の変更など、制作物の7〜8割は既存のaiデータをもとに修正するケースが多く、その都度、膨大なaiデータの中から該当の既存データを担当者がファイルサーバーから探していました。しかし、人的作業は効率が悪く、制作したデータが増えるにつれデータの格納場所も複雑となり、探しているデータがなかなか見つからないという課題も生じていました。

 この業務においても、検索システムを取り入れることで大きく業務効率化を図ろうと考えています。仕組みとしては、Illustratorの機能を使いPDFを生成。PDFから抽出したテキストとファイルの場所をひも付けてリスト化し、それをもとにキーワード検索をします。このシステムは現在開発中で、2024年内に運用を開始する予定です。

Illustratorの機能を使いPDFを生成。PDFから抽出したテキストとファイルの場所をひも付けてリスト化し、それをもとにキーワード検索するシステムを開発中

 どちらの事例も目検では処理できる件数に限界があり、見落としが起こる可能性がありますが、システム化することでデータの検索を正確に行えるため、業務効率化はもちろん業務の精度向上にもつながります。今後はテキストだけではなく、画像情報の検索や、PDF内に含まれる画像に何(ロゴ・キャラクター)が写っているかなど、より業務に即したアップデートを検討しています。

 OCRを活用した業務効率化は、多くの業界で進められており、デジタル化の流れの中で重要な手段となっています。

 アットホームの事例のように、文書をOCRで読み取りデジタル形式に変換することで、検索性の向上と手作業の削減を図るケースのほか、OCRにより文書から重要な情報(取引先の名前、日付、金額など)を自動的に抽出し、データベースに登録することでデータ分析や報告の作成を簡単にするケースなど、さまざまな事例があります。

 このようにOCRは業務の効率化を促進し、組織全体の生産性を向上させる重要なツールとなっています。OCRだけでなく、業種や業務プロセスに応じて、最適な手法を検討することが、さらなる業務改善につながると言えるでしょう。

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