不動産業界のDX推進において活用するAI技術や先端技術との親和性、活用方法やその効果、将来性などについて、アットホームラボ代表取締役社長の大武義隆氏が解説する。
前回の連載第6回「不動産DXに欠かせない、画像認識AIの絶大な効果とは?」では、画像認識AIの活用による不動産業の業務効率化について紹介しました。今回は、OCR(Optical Character Recognition:光学認識技術)の活用事例をもとに、社内の業務効率化に着目します。書類を扱うことが多い企業や業界にとって、必須のツールと言えるOCR。どんな効果がもたらされるのでしょうか。
アットホームラボ株式会社 代表取締役社長
アットホームに入社後、営業職・企画職などに従事。
2019年5月にアットホームのAI開発・データ分析部門より独立発足したアットホームラボにて、テクノロジー部門を統括し、不動産分野の課題解決に適したさまざまなAIモデルの企画を担当。23年4月より代表取締役社長に就任。
OCRとは、印刷された文字や手書きの文字を画像として読み取り、デジタルテキストに変換する技術です。この技術は、スキャナーやカメラで撮影した文書から文字を識別し、コンピューターが理解可能な形式にするために用いられます。
紙の文書や古い書籍、資料をデジタル化することで、データを効率的に運用したり、劣化を防止したり、スキャンした文書内のテキストを検索可能にしたり、さまざまな業界のあらゆるシーンで使われています。例えば、医療業界では電子カルテのデジタル化や処方箋の自動入力などに活用されているほか、小売業界では商品ラベルの認識、教育業界では試験答案の採点や教材のデジタル化――といった形で、OCRが活躍しています。
OCRは、効率的な文書管理や情報抽出のために重要な技術であり、学術分野のみならずビジネスで広く利用されています。特に最近では、AI技術の進展により、OCRの精度と適用範囲が大幅に拡大しています。
不動産業界のデジタル化の遅れは長年の課題でした。いまだに多くの契約書や重要書類が紙ベースで処理されており、このような状況が業務の非効率性を生んでいました。さらに、業界全体で人手不足が深刻化し、従来の労働集約的な業務モデルの限界が露呈しつつありました。
しかし、これらの課題に対応するため、近年では業務効率化を目指したDXの取り組みが進んできています。その一つであるOCRの活用例を紹介します。
不動産取引には多くの契約書や関連書類が存在します。OCRを活用して手書きの契約書や印刷された書類をスキャンし、デジタルデータに変換します。これにより、文書の検索や管理が容易になり、業務の効率化を図ることができます。
賃貸物件の申し込み時に使用される入居申込書は、紙で提出されることが多いです。OCRを使ってこれらの情報を自動的にデジタル化し、データベースに登録することで、手作業での入力作業を削減し、処理の迅速化を実現します。
不動産の管理業務では、支払いに関する請求書や領収書のやり取りが多く存在します。これらの書類をOCRで読み取り、金額や日付、取引先情報などを直接会計ソフトや管理システムに登録することができるため、経理業務が効率化します。
不動産業界におけるOCRの利用は、業務効率やデータ管理の質を向上させるだけでなく、顧客サービスの向上にも寄与しています。今後も技術の進化に伴い、さらに多くの利用方法を生むことが期待されています。
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