吉野家HDのダチョウ事業への参入は、「持続可能な未来」を見据えて始まった。1899年に創業し、1968年に外食チェーンの展開を開始した同社は、50年以上にわたって事業を継続してきた。
広報担当者いわく、「直近の50年間は牛肉の動向に左右され続けてきた」という。穀物飼育の牛にこだわり北米から牛肉を仕入れているため、輸入の解禁状況や2004年に起きた牛海綿状脳症(BSE)の問題、為替などに大きく影響された。全国1200以上の店舗で安定的に日常食を提供し、事業成長を遂げるには畜種分散が命題だったわけだ。
これまでは、鶏の唐揚げを「第2の柱」と位置付けて、メニューの幅を広げながら畜種分散を図ってきた。現状の販売構成比は、牛丼関連商品が約50%、鶏の唐揚げが約15%(目標値は20%)を占め、さらに季節商品やその他メニューが続くという。
こうした背景があり、同社の河村泰貴社長が目をつけたのが「ダチョウ」だった。牛豚鶏と比べて少ない飼料で育ち、ほとんどメタンガスを出さないため温室効果ガスの排出量が少ない。さらに、カロリーや脂質が少なめでタンパク質・鉄分・ビタミンB12は豊富だ。見た目が牛肉に似ていて、味が好印象だったことも決め手の一つになったようだ。
そうした畜産としての魅力から、吉野家HDは2015年に茨城県にあるダチョウ牧場を買い取って、ダチョウの飼育事業を開始した。現在、広さ3.6ヘクタールの農場で日本最大規模となる約500羽を飼育している。飼料効率がいいダチョウだが、「育てやすいわけではない」と辻氏は言う。
「ダチョウは背が高くて足が長く、人間の骨が折れるぐらいのキック力があります。二足歩行で世界最速なので、それなりの面積も必要です。また、雛のうちは高温や湿気などの環境変化に弱く、環境コントロールが欠かせません。そうした課題に対して試行錯誤しながら取り組んでいます」(辻氏)
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