右近氏は、ぼんごの卒業生に対して、地道に修行や経験を重ねて、店と顧客との信頼を結んでいってほしいとも話す。その意味では、地道に長く続けている、親類が営む板橋「ぼんご」と、一度失敗したが不屈の想いで再起した亀戸「豆蔵」の姿勢は、「おにぎりの心を伝えてくれている」と、右近氏は語った。
ぼんごの顧客といえば、かつては地元の常連ばかりだったが、今は全国から、特に若いZ世代が来るようになった。インバウンドの人気も高く、英語と中国語、韓国語でメニューを用意している。今ではよく目にする、2種類の具材を入れたおにぎりを流行させたのはぼんごの功績。「すじこ+さけ」という親子の組み合わせや、「卵黄+肉そぼろ」のすき焼き風になる組み合わせなどは秀逸だが、多くは顧客からのリクエストで販売を始めたという。その意味でぼんごは、顧客とつくってきた店である。
しかし、最近はぼんごと他店で“二股”をかけて修行し、開業をする人もいると嘆く。また、百貨店のイベントのために休業する店もあるが、感心しないと、右近氏は顔を曇らせる。
チェーン化に否定的な右近氏だが、チェーン化を目指す人は多い。
「こんが」を展開するFBIホールディングス(横浜市)は、おにぎりを世界に普及する目的でFC(フランチャイズ)を募って多店舗化を目指している。こんがは2021年、蒲田に1号店をオープン。その後は赤坂や羽田空港、鎌倉に拡大している。
ティーエッセンス(東京都文京区)の「ぼんたぼんた」は、うどんなど他業種とのコラボ店を含めて関東や関西、東北に18店と手広く展開している。2008年の1号店である護国寺店オープン当初は「ぼんご弐」と称していたが「ぼんたぼんた」に改名した。
近年では「スニーカー王」として知られる本明秀文氏と右近氏が資本提携して、こぼんごという会社を設立。2023年1月に「ぼんこ」という店を新宿に出店したが、5月に「まんま」に店名を変更。人気アニメとのコラボなど、方向性が異なるので1年で資本提携を解消し、現在は系列店でなくなっている。本明氏はスニーカー販売事業である「アトモス」を米国フットロッカーに約400億円で売却し、新たにおにぎり事業でニューヨークなど世界を目指すとしている。
ちなみに東京都内で最古のおにぎり店といわれるのが、浅草の言問通りにある「宿六」だ。店内はカウンター中心で、すし店の風情がある。おにぎりで初めて『ミシュランガイド東京』のビブグルマンに選出され、インバウンド客が多い。
単一産地の米を毎年厳選して、大釜で炊いているのが大きな特徴。木の型を使って米を成型し、ふんわりと握って仕上げている。東京湾で採れた江戸前の海苔で包み、具材は厳選した素材を使用。サイズはコンビニおにぎりよりも小ぶりで、海苔の片面を立てる独特なおにぎりのスタイルだ。ザルに乗せて、2切れのたくあんとともに提供する。価格は、300円台が基本で、みそ汁も数種類提供する。
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