――現在、トヨタグループをはじめ計7社から10人のエンジニア人材を受け入れられています。企業間の連携を強化し、ものづくりの考えや手法を積極的に導入されることは、品質管理やコストや競争力の強化に加えて、経営的な観点からみて、どのような相乗効果を期待していますか。
稲川: 宇宙産業は、輸出入が自由にできるかというとそうでもない部分があります。ロケットの技術はいろいろな意味で転用可能といわれる技術ですし、ロケットそのものの輸出入にも、相当の規制があります。国内で、技術やサプライチェーンをある程度完結する必要がある点は、ロケット産業において非常に大事なポイントです。
しかしながら、日本は宇宙産業だけで見ると、マーケットが小さくて、一通り作られるのですが、サプライヤーさんが1社など、やはり絞られる可能性はあります。
日本は例えば、自動車業界は世界で競争力があります。サプライチェーンという言い方をしますが、トヨタのような大手以外に、それを支えるメーカーさんがたくさんある点が日本のアセットとして大きい部分です。そういった方々が宇宙産業においてシナジーを持って、参入してもらうことがものすごく大事だと思っています。
大切なのは他の産業、特に強い産業とどのように連携できるかという点です。当社は、トヨタグループをはじめとしたさまざまな企業と連携できている点が強みです。
一方で宇宙産業には、特殊性もあります。例えば他業界のメーカーがロケットをやりますと言って参入してきたとしても、やはりすぐにはできない世界観もあるわけです。成長産業だからなんとなく飛び込みたいと思っていても、飛び込むためにはどうすればいいのかを考えた時に、先行しているプレーヤーとして私たちの取り組みを見ていただき、宇宙産業で連携や参入ができるところをしっかりとつかんでもらいたいです。
――オープンイノベーションはよく難しいと言われます。成功のポイントをどう考えますか?
稲川: やはりWin-Winの関係が大事なのではないでしょうか? 宇宙産業は、まだ黎明期だと思っているので、そういう段階ではオープンイノベーションが大事だと思います。守りで隠すみたいなことではなく、いろいろな方とご一緒しながら進めていく、大きくしていくことをまず優先して考えるべきだと思います。
以上が稲川CEOへのインタビュー内容だ。ビッグデータやIoT、AI技術の進化などにより、通信衛星の需要はますます高まっている。ISTによる垂直統合型ビジネスは、低コストで高頻度なロケット打ち上げを実現させ、 フォーメーションフライト技術を活用した衛星のコンステレーションシステムにより、大容量データ通信に対応できる衛星ブロードバンドの提供を可能にする。
さらに、他業種からのエンジニア人材の受け入れやオープンイノベーションの推進により、技術革新のスピードは増すばかりだ。宇宙の利活用は、宇宙輸送と通信インフラの未来を切り開き、社会全体に利益をもたらしてくれる。ISTは次なる挑戦に向け、さらに前進していく。
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